1年目
春
春@〜夢と幽霊とオムライス〜
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て、その言葉に「それ」は喜びの笑みを浮かべる。とは言っても顔は前髪で隠れていてよく見ることはできず、ちらちらと見える目は相変わらず虚ろなもの。むしろ、口元しか見えないため、笑った顔は恐怖しか覚えなかった。
……いや、恐怖しか、というのは如何せん間違いかもしれない。
俺は心の奥底で満面の笑みを浮かべる「それ」にどこか興味を抱いていた。
「そうねぇ、オムライス! オムライスが食べたい!! あ、ピーマンは入れないでね!?」
耳に入ってきた言葉に、小学生かよ、と俺はつい心の中でツッコミを入れてしまう。
そして、なんとか立ち上がると、震える足を台所へと向けた。
後ろから感じる視線にはなるべく触れないよう心がけて……。
台所に立ち、少し冷静になったためか、俺自身もお腹が空いていることに気づいた。
それと言うのも、昨日は引っ越し作業で何も口にできていなかったためだ。
俺も馬鹿じゃないか……。
ついでに自分の分も作ろう。
そんなことを考えながら冷蔵庫を開ける。そこからは、ひんやりとした感覚が指先に伝わり、その指は他のものには目もくれず、8個入り115円の卵に向かう。
だがここで重要なことに気づいてしまった。
……ご飯炊いてない。
肝心のオムライスが出来上がったのは注文を受けてから1時間後のことだった。
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