1年目
春
春@〜夢と幽霊とオムライス〜
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草に火をつけ、ふーっと口から煙を吐き出す。
ここから俺の夢は始まるんだな。
そんなことを考えながら改めて部屋を見渡してみる。広くはないが、綺麗なフローリングと白い壁に囲まれてたその部屋は俺の気分を清々しくさせてくれた。
そして―――
「目指せ! 武道館!!」
そんな言葉とともに腕を振り上げ、意気込みを入れる。
痛たたた…。
しかし、体は正直なもので、朝からの引っ越し作業のため腰が悲鳴を上げていた。
俺は引っ越し疲れの体を休めるため、まだきちんと片付いていない段ボールだらけの部屋で床についた。
……そしてその夜、事件は起こった。
金縛り。
俺は生まれて初めての経験に極度のパニック状態に陥った。
こんな時は…、南無阿弥陀仏…、だったっけ……。
とにかく必死で、心の中で何度もその言葉を唱え、早く終わってくれ、と願うしかできなかった。
それからどのくらい時間が経ったのだろう。
長く感じたがきっと1,2分の出来事だったのだと思う。ふと体が軽くなるのを感じ、ホッと胸を撫でおろし、目を開けた。
……それが間違いだった。
「それ」は枕元にいた。血で染まったかのような真っ赤なワンピース、ボサボサの長い髪、そして薄光りを放つ青白い手で覆ったその顔からはすすり泣く声も聞こえる。
「ぎゃー!!!!」
「きゃー!!!!」
本当に怖いと声にならない、と聞くがそんなことはない。声は出るものだ。
自分の声と重なり、別の悲鳴も聞こえたような気がしたが、そんなことには構っていられないと、とにかく目を閉じる。
朝になればこの悪夢が終わると信じ……。
朝日が差し込むのに気付き、俺は目を開いた。その日ほど夜を長く感じた日はないだろう。
―――そして、希望は容易く砕け散ちることとなった。
朝になっても「それ」はまだ枕元にいたのだ。少し前かがみになり、前髪をだらんと垂らした状態で俺を見下ろしている。そこから覗く大きな瞳は虚ろで、光は宿っていない。
それを見た俺はもう一度悲鳴を上げる。そして、それに答えるかのように自分のものとは別の悲鳴が上がった。
今のは誰の悲鳴だ…?
「大声出さないでよ! びっくりするじゃない! 呪い殺すわよ!!」
「それ」に話しかけられた時、悲鳴の主も目の前にいる「それ」のものだった事に気がついた。
そもそも、幽霊に普通に話しかけられてしまった。
何なんだ、この幽霊。
恐ろしい言葉も聞こえた気はするが、幽霊に話しかけられたことに戸惑い、そのことはすぐに忘れてしまった。
幽霊が話しかけてくることなどあるのだろうか。ましてや、大声に驚く幽霊などい
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