第五十六話 中華街その三
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「そうなのでしょうか」
「嫌いじゃない、しかし」
「広東の方がいいのですね」
「広東料理は中華で最もいい」
実際にそう思ってさえいるというのだ。
「本当にな」
「ですか」
「うん、料理へのセンスはいいみたいだね」
二人以外の声がしてきた、その主はというと。
「あんたか」
「随分な言い方だね」
王だった、白いシェフの格好で二人の席の傍に立っていた、加藤はその彼の方を向くことなく言ったのである。
「相変わらずと言うべきかな」
「気分を悪くしたか」
「別に。二人の料理はね」
その料理の話をする王だった。
「どれも私が作ったけれどね」
「そうか」
「味はどうかな」
「美味いな」
「そうですね」
二人で話す。
「これが王さんの料理ですか」
「腕は確かだな」
「広東料理は凄いんだよ」
王も笑って二人に言う。
「中華料理の中でもね」
「食材が豊富だからだな」
「あの清の乾隆帝も度々広東に巡幸に行って」
「広東料理を食っていたか」
「そうしていた位だからね」
「広東料理はいいか」
「それにね」
それに加えてだった、王はさらに言う。
「私が作っているからね」
「腕にも自信があるのですね」
「ある」
まさにそうだというのだ。
「そう言わせてもらうよ」
「この味ならだ」
加藤は炒飯、中華料理の基本中jの基本でありこれを食べればその料理人の腕がわかるとまで言われているそれも食べながら言った。
「何処でもいけるな」
「私の腕は確かだからね」
「それでだ」
しかもだと言う加藤だった、食べながら。
「繁盛するな」
「必ずというんだね」
「この味ならな」
「私と君は敵なんだけれどね」
王は笑ってこうも言った。
「それでも褒めるんだね」
「いいものはいいと言う」
加藤は海鮮炒飯を食べながら素っ気無く言っていく。
「俺はそうした主義だ」
「それでなんだね」
「そうだ、これだけの味ならだ」
「繁盛するっていうんだね」
「その通りだ、そしてだ」
「稼げるっていうのかな」
「絶対にな」
加藤は食べながら言う、そしてだった。
スペンサーも饅頭を食べつつこう言った。
「合衆国の中華街にもこれだけの味のシェフはいませんね」
「そうだろうね」
王はスペンサーにも自信のある笑みで返す。
「私の右に出る料理人はそうはいないよ」
「アメリカの料理は俗に大味と言われていますが」
「実際は変わってきているね」
「かなりよくなってきています」
アメリカという国が出来て二百年以上を経てそうなってきたというのだ。
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