第二十五章
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第二十五章
「相手が相手だからな」
「村人だけじゃ問題じゃないですけれどね」
「あいつがいればだ」
役の言葉がここでまた鋭いものになった。
「生半可なことでは勝てはしないからな」
「二人がかりでもですね」
「そうだ。相当な強さであるのは間違いない」
言葉に油断はなかった。そして楽観視しているものもなかった。
「だからだ」
「わかってますよ、それは」
本郷もまた今は笑っていなかった。真剣そのものの顔であった。
「相手が洒落になりませんからね」
「その通りだ。さて、夜になるまではここに立て篭もる」
「はい」
「それからだ。動くのは」
まず夜まで待つということだった。時間を待つというのである。
「いいな」
「その間休めたらいいんですがね」
「交代で休むか」
役は本郷の言葉を聞いてこうも言った。
「結界を張ってからな」
「その間に英気を養ってですね」
「何度も言うが今回は相手がかなりの強さだ」
役はこのことにかなりの警戒の念を持っていた。そしてそれを本郷に対して隠すところがなかった。それも全く、であった。
「だからこそだ」
「じゃあまずは結界を張ってから」
「君が先に休むといい」
役は彼に告げた。
「先にな」
「いいんですか?じゃあ二時間ばかり」
「これを使えばいい」
今度出してきたのは黄色い札だった。それを本郷に対して手渡したのであった。
「これを使えばすぐに眠ることができる」
「へえ、そりゃまた便利な札ですね」
「術にも色々なものがある」
役は本郷に告げた。
「その中にはこうした眠らせるものもある」
「本来は敵を眠らせる為のものですか?」
「そうだ。他には砂もあるがな」
「ああ、サンドマンの」
砂と聞いてすぐにそれだと察した本郷だった。彼も西洋の魔術のことは知っていた。役は陰陽道だけでなく西洋の魔術や中国の仙術も使えるのである。
「あの砂ですか」
「それを使うこともできるしな」
「今その砂もありますか?」
「持って来ている」
役は答えた。
「そして今出すことができるが。そちらにするか?」
「いえ、今はこの札でいいです」
それでいいと答える本郷だった。
「何か面白そうですし」
「二時間経てばだ」
今度は黒い札を出してきてそれを彼に見せながら述べた。
「これを貼る」
「それを貼れば起きるんですか」
「眠らせる為のものもあれば起こす為のものもある」
役はその相反するものをそれぞれ話に出してみせた。
「そういうことだ」
「そうですか。じゃあ二時間経てば」
「起こす。何かがあってもな」
「ええ。そういうことで御願いしますね」
こうやり取りをしたうえで自分の額にその黄色い札を貼ってすぐに眠りに入る本郷だった。額に札を貼
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