決勝戦 五学年〜前編〜
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撃は学年主席の攻撃であり、士官学校でもトップレベルの攻勢だ。
それを見た周囲が、激しい攻防と理解しても無理はないのかもしれなかった。
アレスにとっては不本意なことであったが。
+ + +
「テイスティア先輩」
『どうしたの?』
「端的に申し上げます。チャンスかと」
『チャンス?』
「マクワイルド先輩の攻勢がいつもよりも緩い気がします」
『……そうだね』
プライベート通信の向こうで、歯切れの悪い声が聞こえた。
相手はどういうわけか、これまでの苛烈さがない。
手を出せば一気に燃やされると感じる恐怖が感じなかった。
ここで二人が一気に戦線を押し上げれば、アレスはその対応に追われるだろう。
勝つことも考えられる。
そんな考えを否定するかの言葉に、ライナは眉をひそめた。
「何か間違えているでしょうか?」
『ううん、フェアラートさんは間違えていないよ』
「ならば、テイスティア先輩の考えを教えていただけませんか。それとも烈火のアレスがこのような負け方をするのは不本意なのでしょうか?」
『相変わらずストレートだね』
「今は時間が重要になるかと思いますので」
『そうだね。もう少しまとめてから言いたかったけど』
「端的に申し上げて。時間の無駄です」
ライナの断言に、通信の向こうで小さな笑い声が聞こえた。
『アレス先輩は烈火なんて呼ばれているけど、本当は守勢の人なんだ』
「そうは思えませんが……」
言葉に、ライナは以前の戦いを思いだす。
一度火が付けばとても手が付けられない。
だからこそ、火が付く前に動くべきだと、ライナは思った。
『後の先といえばわかるかな。敵の行動に対して発生する欠点や弱点を、実に的確に付いてくる。それで相手を崩して、後は――』
「なるほど、それならば理解できます」
ライナはモニターの前で、小さく頷いた。
烈火の呼び名と宇宙母艦を使った突撃戦術。
それらからアレスは攻勢に強いと思われがちだ。
実際にライナもそう思っていた。
しかし、その話を聞けば納得が出来た。前回のライナの戦いも、そして過去に見たアレスのシミュレーター記録も、それらの多くはアレスが積極的に攻めるというよりも、相手の攻撃を利用することが多かった。実際にライナもバグという不本意な形であるが、こちらの生じたミスから一気に攻め込まれている。
「お詳しいのですね」
『見るのは得意だし。アレス先輩はずっと見てきたから」
「こちらが下手に仕掛ければ、そこから逆撃を食らう可能性が高いと思われますか?」
『それもある。何よりも、このまま消耗戦になれば、こちらの方が最終的に有利になるだろうしね。でもそれは長くは続かないと思うから、出来るだけ長く……ね』
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