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戦国異伝
第百四十二話 小谷城からその十五
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 その浮き足立つ朝倉の軍勢を見てだ、即座に全軍に命じた。
「よし、今じゃ!」
「はっ!」
「それでは!」
「今から!」
 信長の言葉と共に瞬時にだった、織田家の諸将は一気に攻めに入った。彼等は全軍で朝倉の軍勢を攻めた。それは青い津波の様だった。
 その津波を受けてだ、朝倉の軍勢は総崩れになろうとした。  
 だが彼等には宗滴がいた、彼はその朝倉の軍勢に大音声で言った。
「落ち着け!」
「はっ、確かに」
「こうした時こそ」
「そうじゃ、落ち着け」
 そしてだというのだ。
「最早勝敗は決した、ここはじゃ」
「どうされますか、ここは」
「今は」
「全軍越前まで退く」
 そうするというのだ。
「後詰はわしが務める。皆越前まで逃げよ」
「ですが宗滴殿は」
「戦場に残られるのですか」
「案ずるな、後詰は武士の誉れじゃ」
 それ故に無事務めてみせるというのだ。
「だからここはな」
「我等に退けと」
「無事に」
「そして生きよ」
 無駄に命を落とすなとも告げた。
「わかったな」
「はい、それでは」
「ご武運を」
「貴殿もじゃ」
 宗滴はたまたま傍にいた龍興にも告げた、彼は今は朝倉の客将としてこの戦に加わっているのだ。その彼にも声をかけたのだ。
「早く逃げられよ」
「宜しいのか?この度の後詰は」
「危ういと申されるか」
「左様、それでもですか」
「心配無用、貴殿も逃げられよ」
 自分のことは構うなというのだ。
「ではな」
「それがしは諦めませぬ」
 苦い顔でだ、龍興は宗滴に述べた。既に朝倉の軍勢は宗滴が後詰を務めると聞いて次から次に戦場を離れていっている、既に戦は決している。
「必ず美濃を奪い返し」
「雪辱を晴らされますな」
「例え何をしても」
 強い意地も見せる。
「そうします」
「では今は」
「はい、それでは」
 こう話してだ、そのうえでだった。
 龍興もまた戦場を離脱した、そうして。
 宗滴は彼を見送ってから織田の大軍の前に一騎で立ち彼等に告げた。
「さあ、わしと戦わんという御仁は来られよ!死合おうぞ!」
「何と、一騎で我等の前に立つとは」
「恐ろしい御仁じゃ」
 その宗滴を見てだ、織田の諸将達は息を呑んだ。
「十万を超える大軍の前に立つとは」
「まさに鬼神じゃな」
 誰もが宗滴の気迫の前に動きを止めた、それを見てだった。
 信長もだ、その諸将にこう告げた。
「今はよい、攻めるな」
「宗滴殿がおられるからですか」
「わしは確かにあの御仁に勝った」
 これは確かだ、だがだというのだ。
「しかし気迫にはな」
「負けたと」
「そう仰るのですか」
「人としてはまだだじゃ」
 宗滴の域には達していないというのだ。
「あの死を決した後詰に攻めるこ
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