第十八章
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第十八章
「そういうことで」
「シアトルは他にも食べるものがある」
こう言いはする役だった。
「寿司にこだわる必要もない」
「じゃあステーキか中華料理ですかね」
本郷はまずはそういったものを脳裏に浮かべた。その次は如何にもアメリカといった食べ物を話に出してみせた。
「それかハンバーガーか」
「アメリカのハンバーガーも日本のそれとかなり違う」
ハンバーガーについても言及する役だった。
「それもかなりな」
「何か大きいらしいですね」
「大きいだけではない」
それだけに留まらないのだというのだ。アメリカのハンバーガーは。
「全体的に作りも大雑把だがこれは本郷君も知っていると思うが」
「いえ、シアトルのハンバーガーですよ」
彼が言うのはそういうことだった。シアトルのハンバーガーについてである・
「シアトルのもそうなんですか。やっぱりニューヨークみたいな感じなんですかね」
「流石に味は違うだろうな」
これについてはある程度予想しているといった感じの言葉だった。
「味はな」
「違いますか、やっぱり」
「西と東で随分と離れているからな。同じアメリカでもね」
「日本が間に幾つも入る位にですね」
「だから味が違っていても当然だ」
こう述べるのであった。
「それもな」
「そういうことですか」
「だが。少なくとも寿司よりは口に合うだろう」
「アメリカの寿司よりもですか」
「アメリカのものだと頭でわかっているしな」
それもあるのだという。舌はそのまま頭に直結しているということである。
「だからな」
「そうですか。じゃあシアトルでは寿司にしますか」
「そうするといい。それでだ」
「ええ」
「食べ物の話はとりあえずこれで終わりにしておこう」
今はそれで止めるということだった。
「これでな」
「止めますか」
「アメリカに入ってからでも遅くはない」
だからだというのである。少なくとも今ここで話をしても仕方のないものであることは事実であった。
「カナダ。特にこの村ではだ」
「何もないですからね。見事なまでに」
「それで話しても仕方がないし折角食べ物を分けてくれる牧師様にも申し訳ない」
「不満を言うことにもなりかねないですしね」
「そうだ。だから止めておこう」
こうした配慮もあっての言葉であった。
「それでいいな」
「ええ。じゃあこれで」
「さて。それでだ」
話を変えてきた役はさらに言ってきた。その頃には掃除はもうあらかた終わってしまって最後のチリを塵取りに入れるだけになっていた。
そのチリを入れながら。話をするのであった。
「これからのことだがな」
「まず昼に海の中に入りますか?」
「そうだな。それがいいか」
本郷の提案に応えて頷く役であった。
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