第十七章
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第十七章
「終わるとな。祝いもしたい」
「シアトルだったらいいステーキハウスもありますしチャイナタウンもありますね」
「それだけではない。多分和食の店もある」
それもあると予想するのだった。
「どれでも好きな店に入られる」
「それじゃあ寿司ですかね」
本郷がここで言ったのはそれであった。
「寿司食べませんか、シアトルに着いたら」
「寿司か」
「久し振りに和食が食べたくなりましてね」
だからだというのである。
「だからどうですか?」
「それはいいが高いぞ」
役はこんなことを言い出した本郷に対して言葉を返した。
「アメリカだと寿司はな」
「そんなに高いんですか」
「他の国の料理はどの国でも高い」
まずはこのことを理由として出すのだった。
「専門の料理人も素材も少なくなるからな」
「だからですか」
「和食は確かにポピュラーにはなったがな」
それでもだというのである。
「だが高いことは高い。日本のそれに比べてな」
「そうなんですか」
「それにだ」
役はさらに言い加えてきた。
「味も違うぞ」
「そんなに違うんですか」
「日本人とアメリカ人ではそもそも舌があまりに違う」
だからだというのである。これはもう言うまでもないことではあった。
「それが大いに関係するからな」
「ってことはまずいんですか?」
本郷はその顔を顰めさせて単刀直入に役に問うた。
「アメリカの寿司は」
「まずいかというとそうとも限らない」
まずいということは否定はした。しかしであった。
「だが日本人の舌に合うかどうかというとだ」
「わかりませんか」
「まず合わない」
今度は実にはっきりとした言葉であった。
「日本人にはな」
「そうですか。合いませんか」
「これもまた文化だ」
舌もまた文化ということである。これは否定できないものであった。何故なら舌はその国の料理に馴染んでしまうものだからである。
「例えばアメリカ人は中々海草を食べない」
「海草を食べないんですか」
「そうだ。食べない」
このことを強く言う役だった。
「最近その和食で食べるようになった位だ」
「じゃあ海苔なんかは」
「馴染みのない食べ物だった」
これまたはっきりと述べた言葉であった。
「本当にな。食べ物とさえ思われていなかった」
「またそれは妙な話ですね」
本郷は完全に日本人として役の言葉に応えるのだった。
「海苔食わないんですか」
「それもまた文化だ」
また文化という言葉を話に出してみせた役だった。
「何を食べ何を食べないのかもな」
「文化っていっても色々ってわけですか」
「そういうことだ。だからだ」
ここまで話してそのうえで話を纏めてきた役だった。
「アメリカの寿司は食べる
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