第十四章
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第十四章
「海の中に行きますか」
「いや、それよりもだ」
ここで役は考える顔で本郷に対して述べるのだった。本郷は席を乾拭きしており役は床をはいている。そうしながら会話をしているのである。
「今は昨夜と同じことをしたい」
「村や家の中を調べるんですね」
「そうだ。式神を使ってな」
これもまた昨夜と同じであった。彼はそのやり方でまた調べるというのであった。
「やってみるつもりだ」
「式神が見つからなかったらいいですけれどね」
「その心配はない」
言いながら早速懐からその式神の札を出す。だがその札は昨夜のものとは違っていた。
色が黒いのだ。漆黒の紙に白い文字で言葉が書かれている。彼が今出してきた札はそうした黒と白が入れ替わっているものであったのだ。
「これを使うからな」
「黒ですか」
「黒は影だ」
役はここでこう言った。
「これを使えば影と思い見つかることはない」
「何か魔力とかで見つからないといいですけれどね」
本郷はここでこのことを危惧したのだった。そうした相手ともこれまで数多く戦ってきたからこその危惧であった。
「それだけは」
「若し彼等が我々が思っている通りの存在ならばだ」
だが役はここでその危惧する本郷に対して告げるのだった。
「まず気付かれることはないがな」
「ええ、あの連中ならそうですね」
本郷もまたそれはわかっていた。だからこそ役の今の言葉に対して頷くことができたのである。そうしてそれを見届けたうえでさらに語る役であった。
「だからだ。まずは安心していいだろう」
「そうした魔力とかについてはですか」
「連中はまた別の存在だ」
そうだというのであった。
「だからだ。安心していい」
「わかりました。じゃあやってみますか」
「うむ。それではだ」
その手にある札を手首のスナップで投げた。するとその数枚の札は忽ちのうちに空中に散り烏達となった。彼等は一斉にそれぞれの場所に飛び消えていったのであった。
「これで遅くとも三十分後にはわかる」
「果たしてどうなっているかがですね」
「そうだ。さて、今彼等がいるとなればだ」
「それで寝ているとなれば」
「彼等は間違いなく夜に動く存在ということになる」
夜におらず朝にいるとはどういうことなのか。これは夜勤をしている人間についても言えることであった。
「いればな」
「そうですね。今は寝ていますかね」
「そこまではわからないが。とりあえずは」
役は話をしながら目を鋭くさせた。それはまるで何かを見る目であった。
その目で言うのだった。こう。
「いる」
「家の中にいますか」
「殆どの人間が寝ようとしているな」
「そうですか。それじゃあやっぱり」
「奇怪なことだ。生の魚をそのまま丸呑みしている」
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