反董卓の章
第4話 「俺の意見は――――」
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表の書状はこうだ。袁紹から檄文が各地に届いているらしい。その内容は、董卓が謀反を起こして小帝陛下と宦官全てを殺害。新たに陳留王を献帝として祭り上げて、洛陽で悪逆非道の執政を行っている。この暴虐に董卓の魔の手から袁紹が助けだした何皇后は、自身の子の後を追うように自害なされた。悪逆非道の董卓の魔の手から、献帝陛下を諸侯全ての手で取り戻さんがために、ここに大連合の結成を宣言する。漢王朝に義心ありき勇将は、疾く馳せ参じたし……」
「嘘だ!」
俺の言葉を否定するように声を上げる人物。
顔をあげなくてもわかる。
愛紗の……声だった。
「愛紗!」
「あ…………す、すみません、ご主人様」
星の叱責に、自身が犯した非礼に頭を下げる愛紗。
俺は、必要がない、と首を振る。
「気持ちはわかる。俺がいない間、この梁州がいかに董卓……いや、董仲穎殿に恩義を受けてきたか、朱里と雛里からも聞いている。桃香が州牧になれたのも、ひとえに董仲穎殿の口利きのおかげだろう」
「で、でしたら!」
「わかる、といったよ、愛紗。少し落ち着くんだ」
「………………っ、はっ!」
俺の言葉に、ようやく自身の感情を抑えこむ様に下がる愛紗。
まあ、激昂したくなる気持ちもわかる。
桃香が受けてきた恩義は本当だし、その董卓の部下である張遼――霞には、俺も含めて恩義がある。
愛紗は、個人的にも霞との連絡も取り合っていたらしいし…………
「この書状には、宦官であった段珪からの正式な告発文が袁紹の手元にあるらしい。献帝陛下を傀儡に仕立てあげた出来事の詳細が書いてある。その内容を……宗正である劉虞が認めた、ともな」
「……劉虞? 劉虞だとっ! またしても……またしても、あやつかぁっ!」
「っ! 落ち着け、愛紗! いつもの冷静なお前は、どこにいったというのだ!」
再び激昂した愛紗を、星が羽交い絞めにする。
それほどまでに愛紗の怒りは激しかった。
「星、これが落ち着いていられるか! 白蓮殿を困難に陥れた劉虞が、今また恩義ある董卓殿を……! これが許せることだというのか、お前は!」
「愛紗、いい加減にせよ! 今お前が騒ぐことで、状況が変わるというのか!? 今のお前は、激昂して叫ぶだけだ! 董卓殿の苦境が騒ぐことで解決するなら、存分に叫ぶがいい!」
「…………っ!」
「だが、そんなことをしても時間が過ぎるだけでなんの解決にもならん! 今は冷静に怒りを貯めるのだ! それを晴らす機会は、かならずある!」
「…………………………〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!」
声にならない叫びと共に、脱力する愛紗。
劉虞への怒り、自身の無力さ、そして星の正論に反論できない悔しさに。
きつく閉じた愛紗の瞼には、じんわりと涙が浮かんで
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