準決勝
[4/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
けますか?』
「まさかね。相手が戦う気がないというのならば、こちらにとっても随分と楽な戦いだ――そうだな、作戦名は陥穽漁法とでもしようか」
『作戦も何も、漁法って、もろにいっているじゃないですか』
サミュールが呆れたように答えた。
+ + +
『東から敵艦隊五百を確認』
「了解。では、すぐに全艦隊を動かしてくれ」
索敵艦からの言葉に、フェルナンドはコンソールを叩いた。
簡単なものだった。
事前に情報さえあれば、敵の進行を把握する事など容易い。
まだ慣れない三学年と二学年に対して攻撃をして、後は逃げるだけ。
そう、作業のようなものだ。
相手に見つかり、そして次の場所へと逃げる。
元より星域は大きく、逃げる場所には困らない。
ましてや、最初から星図を知っていれば、どこに行けばいいかわかっている。
索敵艦を出して艦数を減らすこともなく、静かに、確実に逃げだしていく。
それは全く持ってつまらない作業のようなものだった。
そう――まさしく作業。
それは逃げる魚を上流から下流の罠へと追い込む漁のように。
カルロス・フェルナンドは、気づかぬままに、罠に吸い込まれていった。
+ + +
アレスの索敵艦によって、逃げだすことが数回続いた。
当初はフェルナンドの堅実な逃亡の様子を、見ていた者たちも、ようやく気付き始めた。
「今更か」
ワイドボーンの呟きを聞けば、彼は最初から気づいていたのだろう。
つまらなそうに、隣ではヤン・ウェンリーが頷いていた。
ライナ自身も二度目の逃亡で気づいた。
フェルナンドは戦う気がない。
それは索敵艦に捕まれば、本隊が後ろから現れると思っているからだ。
だから、一切戦う事なく逃げだす。
それはある意味では正しいのだろう。
少なくとも――アレスが相手でなければ。
アレスの送る索敵艦は、実に巧妙に行動の方向や速度によって、見事に誘導されている。
フェルナンドの逃げる先。
そこにいるのは、アレス以下一万からなる艦隊。
「忙しい時間を割いてきたのはいいが、つまらない戦いだ」
「そうか」
「ん?」
「昔から男子三日会わざれば刮目して見よという言葉がある。ましてや、あの戦いから三年が経っているんだ。彼がどう成長したか楽しみだよ」
「ヤン」
「なんだい?」
「おまえ、そんな後輩の成長を見て喜ぶような人間だったか?」
「酷い言い草だな」
ヤンは頭をかいて、苦笑した。
「確かに仕事熱心ではないと思うけど。そうしなければいけない理由があってね」
「どんな理由だ」
「少し有名になり過ぎた。だから、良い後輩に早く仕事を渡さないと、私が楽が出来ない」
「貴様は、一度死んでし
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ