準決勝
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を振り向けば、そこにいるのは学生服ではない――同盟軍の制服を着た人間がいる。
二人だ。
眉の太い体格の良い男と――軍人には見えない優しい顔立ちをした男。
それは教官とも違うようで、階級章を見れば、それぞれ大尉と少佐とあった。
どちらもまだ若く、年の割には随分と出世をしている。
「どう思う、ヤン少佐?」
「どう思うと言われてもね。もう少し対戦相手には隠すということも覚えてほしい」
「まったくだ。まるで最初から知ってましたと言わんばかりの動きだな」
野太い声の男が笑い、ライナは呼ばれた名前に驚いた。
ヤン・ウェンリー。
彼のエルファシルの英雄であり、普通であれば目にかかることもない人物だ。
そうすれば反対にいるのは、誰か。
そんなライナの視線に気づいたのか、眉の太い男はライナを一瞥した。
「心配するな、嬢ちゃん。アレスは負けんよ」
アレスのことを知っている。
お嬢ちゃん扱いした事には不愉快だったが、それよりも言葉が気になった。
「なぜです」
「なぜ。なぜか――それは、相手が悪い」
ほらと、男――マルコム・ワイドボーンはモニターを指さした。
その向こうで、アレス艦隊が動き始めようとしていた。
+ + +
『先輩。これ間違いなく、相手は知ってますね』
「気づいているよ」
アレスはゆっくりと頭をかいた。
通常よりも遥かに劣る視界で、こちらの艦隊を狙い澄まして攻撃する。
賭けに勝ったというよりも、むしろ最初からどの星域で、どんな戦いが起こるか知っていたと考える方が正しい。
「事前に星図を見ながら、戦略を考えたんだろう。ご苦労なことだ」
『笑い話ではないですよ。片方が事前に情報を得ていたら、戦いにならないです』
「そうか。実戦ってのは、得てしてそういうものだろう? 先に情報を手に入れた方が、勝つもんだ」
『実戦ではそうかもしれませんが。これは大会です――いったい、誰が』
「ま、誰から手に入れたかはわかるよ。ただ、俺にもどうやってそれを手に入れたかがわからない」
本当に、ある意味天才だなと、アレスは思った。
そこに戦略や戦術性は皆無。
だが、策謀の下準備になると、下手をすれば彼のオーベルシュタインすら凌駕する。
オーベルシュタインは自らの地位と命の安全のために、ラインハルトを頼った。
しかし、フォークならば誰かに頼るということなく、ことが起こった時点で確実に自分の安全は確保していそうな気がする。
「あいつは嫌がらせにかけては、右に出るものはいないな」
『笑い事ではないですよ。どうします?』
「どうするも――相手はもう戦う気はないだろう。こちらの艦隊を二つばかり潰して、あとは逃げる。時間切れ狙いだな」
『では、大人しく負
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