11月11日〜君とチョコレート菓子〜
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代用して『ポッキーゲーム』が行われているようです。まあ、宴会芸のようなものですよ」
フェルナーの明快な説明に「ふむ」と肯いて、オーベルシュタインはさらに質問を加えた。
「そのゲーム自体はどのようなものであろうか」
そのストレートな質問にも、フェルナーは動じることなく真剣な表情で応じた。
「細い棒状のチョコレート菓子を介して、二名の人間が顔を寄せ合うゲームです。……顔を寄せ合うという点に大いに意味があるものですから、あるいは『密談』や『密会』、『違法取引』などの隠語として使用されることも考えられますな」
上官の真意を疾うに承知している官房長は、瞬時に鋭い眼光を向けた。
「卿の言うとおりだ。だが、隠語にしてはあからさま過ぎるのではないか」
オーベルシュタインは何かを考えるように、右手の人差指でコンコンと机上の書類を叩いた。上官がほんのわずかに逡巡する際の、それは癖のようなものであった。
「さあ、小官にも分かりかねますが、実践してみれば何かを掴めるかもしれません。試してみますか」
穏やかだった部下の笑みが愉快げなそれに変わったような気がして、オーベルシュタインは返答を躊躇った。
「……却下する。卿には幾度も煮え湯を飲まされているからな」
ふんと鼻を鳴らして素っ気なく目を閉じる上官へ、フェルナーは諦めることなく畳みかけた。
「おや、そのようなことを気になさるお人ではないでしょう。事の本質を確かめぬまま放置することの方が、閣下には耐えられないのではないでしょうかね」
どうしてこうも、自分の本心をやすやすと見抜くのか。オーベルシュタインは心なしか悔しそうに首を振って目を開けると、ひと癖ある部下へ説明を促した。フェルナーは従卒を呼ぶとすぐさま調理室から細長い乾パンを持参させ、自分と上官の間に置いた。
「適当な菓子がないので、少々太めですがこれを使いましょう。ゲームは単純です。閣下がそちらの端を口に入れ、小官がこちらの端を口に含みます」
「こうか」
オーベルシュタインが乾パンの片端をくわえてフェルナーの方へ差し出した。フェルナーも慌てて逆側を受け止めて、「このまま少しずつ食べていきます」と補足してから口に入れ、目だけで合図した。
サクサクという小さな音が室内に響き、いつしか双方とも呼吸をすることさえ控えていた。
「!?」
5分の1ほど食べ進んだところで、オーベルシュタインが動きを止め、驚いたように乾パンをくわえる口を離した。
「これは……」
自失の様子の上官を、にやりと笑いながらフェルナーが見やる。
「どうなさいました、閣下?」
なんと目の前の部下の忌々しいことか。先ほど、何度も煮え湯を飲まされていると、自らの記憶で確認したばかりではないか。
オーベルシュタインは無言のまま再びコンピュータ端末を開くと、左手の仕草だけでフェルナ
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