暁 〜小説投稿サイト〜
魔狼の咆哮
第一章その八
[2/2]

[8]前話 [9] 最初 [2]次話
た。獣の紅い眼から光が消え身体がだらんと垂れ下がり刀に吊るされた。
「これで終わりか」
 そう言うと獣の身体に足を当て蹴る様な形で刀を引き抜いた。ドス黒い血を流しつつ草原に落ちていく。
「役さん、そっちはどうです?」
 白紙で刃を拭きつつ本郷は傍らにいる役に声をあけた。
「全て片付いた。しかし周りを見てくれ」
「はい。まだいるかも知れませんからね」
「・・・いや、違うな」
「?どういう意味です?」
 紙を草原に投げ捨てつつ問うた。まだ周りには目はいっていない。
「・・・相手の気配が消えたら君は急に注意力がなくなるな。よく見たまえ」
 少し溜息を漏らしつつ役は言った。
「?・・・・・・あ」
 周りを見て本郷は役の言葉の意味を悟った。
「解っただろう、私の言葉の意味が」
「・・・はい。だからこそ使い魔だったのですね」
 今しがた貫いた狼の屍が落ちた場所にはその死骸はなかった。替わりに一つの石があった。その石には何か独特の角張った文字が書かれている。
「ルーン文字ですね」
 石を手に取り本郷は言った。ルーン文字とはキリスト教が普及する前に北欧で使われていた文字である。北欧の神々や伝承、魔術等を伝える為に使われ魔力を秘めていると言われている。
「石に狼の力を宿らせたのだな。魔力もかなりのものを持っているな」
 周りの散らばる石の一つを手に取りつつ役は言った。その石には白銀の弾丸がめりこんでいた。
「式神ですね。陰陽道でいうところの」
「うむ。それもかなり高位のな。これだけの数を一度に扱えたのは陰陽道の長い歴史でも数えられる程しかいない」
「魔術師としても一流ですか」
「だな。どうやらかなりの強敵になりそうだな」
 その言葉に本郷は不敵に笑った。
「そうでなくちゃあ面白くはありませんよ。罪の無い少女を次々と嬲り殺す魔狼、こちらもそれなりのやり方で成敗してやらなくちゃ気が済みませんしね」
「そうだな。殺された女の子達の無念を晴らす為に」
 二人を呼ぶ声がした。声の方を振り返るとアラーニャ巡査長が全力で掛けて来ている。おそらく石に宿った使い魔達の咆哮を人狼のそれと思ったのだろう。二人はすっと微笑むと巡査長のほうへ歩いていった。

[8]前話 [9] 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ