第四十話 独占慾
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言葉に皆が頷いた。後でエーリッヒに話さねばなるまい……。
宇宙暦797年 2月 10日 ハイネセン ワルター・フォン・シェーンコップ
「夜はホテルでは無くこちらに戻られた方が宜しいでしょう」
「この船に?」
「大佐は捕虜なのです。ホテルに泊まるのは構いませんが捕虜というのは偽りでブラウンシュバイク公のために同盟軍の様子を探りに来たのではないか、そう疑われますぞ」
ハイネセンに到着し出掛けようとした俺に真剣な表情で忠告してきたのはフェザーンの独立商人、アルバート・マスチフだった。俺が乗ってきた独立商船ブラッドシェッド号の船長でもある。マスチフは大型犬の名前だが眼の前の船長はどちらかと言えば小柄な三十代後半の男だ。もっとも独立商船の船長だけあって胆力は有りそうだ、危ない橋を渡った事も一度や二度では無いだろう。大体船の名前がブラッドシェッド(流血)だ、普通じゃない。
「逮捕されるかな?」
「かもしれません、しかし私ならそんな事はしませんな」
「ほう、では船長ならどうするかな」
「食事に遅行性の毒を盛って終わりですな。その上で大佐が寝返ってスパイ活動をしていたという噂を流す。皆不審死は当然と思うでしょう、面倒が無くて良い」
「なるほど」
平然としたものだ。もしかすると商売で邪魔になった奴を一人か二人、殺しているかもしれん。或いは襲ってきた海賊を返り討ちにして皆殺しにしたか。いや、この男の副業が海賊だという事も有り得るな。
「忠告に感謝する、夜はこちらに戻ろう」
「気を付けて下さいよ、ここは敵地だと思う事です」
やれやれ、女達と会うのは止めた方が良さそうだ……。
宇宙港を出てハイネセンの市街に出た。公衆TV電話を使ってローゼンリッターの駐屯所に連絡を入れる。直ぐに繋がってスクリーンに若い男が映った。俺を見て驚いている。
「騒ぐな」
『は、はい』
「連隊は今誰が率いている?」
『ブ、ブラウン連隊長代理です』
「代わってくれ、騒ぐなよ」
頷くと直ぐにスクリーンが風景の映像に変わった。保留ボタンを押したらしい、ブラウンを呼びに行ったようだ。
五分程でスクリーンにブラウンが映った。俺を見て驚愕している。
『大佐、どういう事です、これは。まさか本当に帝国に寝返ったんじゃ』
「それは無い、安心しろ」
『そう言われても……』
「何処かで会えないか、出来れば人目に付かないところが良いな。お前も聞きたい事が有るだろうが俺も聞きたい事が有る」
ブラウンがホテルコスモスの隣に有る喫茶店アイーシャで一時間後に会おうと提案してきた。ホテルコスモスはハイネセンの中心地からはちょっと離れたところに有るビジネスホテルだ。その所為であまり繁盛しているとは言えないが値段が安い所為でそこそこ利用客が
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