第四十話 独占慾
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なるほど」
財産目録の所為か……。今年度は開示しないから来年度売るよりも今年度中に売って数字を良くしておきたい、来年度慌てて売って数字を良くしたと思われたくない、そういう事か……。その事を口に出すとリッテンハイム侯がその通りというように頷いた。女達は驚いている、アマーリエがホウっと大きく息を吐いた。
「本人が買いたがっても家族や執事が許さないらしい。借金が多くてはフェザーン商人達が寄り付かなくなる、そう言って止めるそうだ。ウチに出入りしている美術商が言っていた」
「では美術商も困っているだろう?」
「ところがそうでもないらしい」
はて、どういう事だ? お得意様の貴族達が買わぬのでは儲からぬと思うのだが……。しかしリッテンハイム侯が奇妙な笑みを浮かべている。
「向こう側に持って行くようだな」
「向こう側? 反乱軍か……」
リッテンハイム侯が“そうだ”と言うように頷いた。
「まあ実際にはフェザーンで売買する様だが帝国貴族の所有物という事でかなりの金額になるようだ。だが輸送費の問題も有るからな、持って行く時は或る程度纏まった数が揃ってからになるらしい」
思わず唸り声が出た。アマーリエとエリザベートは溜息を吐いている。なるほど商人とは抜け目のないものだ。帝国で安く買い叩いて反乱軍に高値で売り付けて儲けるか……。
「時々とんでもない物が売り出される事も有るようだな」
「とんでもない物?」
「うむ、大きな声では言えぬが……」
リッテンハイム侯が声を潜めた。はて、何だ?
「トラウンシュタイン産のバッファローの毛皮……」
「まさか……」
思わずこちらも声を潜めた。リッテンハイム侯が事実だというように頷いた。皆驚きのあまり声も出せずにいる。
「あれは御下賜品であろう?」
「背に腹は代えられぬという事だな」
今度は溜息が出た。御下賜品を売る? トラウンシュタイン産のバッファローと言えば余程の事が無ければ下賜される品では無いのだが……。
「一体どれほどの値で取引されるのかな?」
問い掛けるとリッテンハイム侯が口髭をちょっと捻り上げる仕草をした。確証が無い時の仕草だ。
「さあて、……はっきりとは言わなかったが帝国内では少なくても十億は下らぬそうだ。反乱軍に持って行けばそれ以上にはなるという事だろう」
また溜息が出た。確かに背に腹は代えられぬとなれば売りたくなる品だ、十億帝国マルクを下らぬとは……。皆も目を点にしている。
「やれやれだな、貴族達が生き残るのも容易ではない。御下賜品まで売らねばならんとは」
溜息交じりに言葉を出すとリッテンハイム侯が後に続いた。
「全くだ、それだけこれまでは優遇されてきたという事なのだろうな」
「平民達の救済だけでは足りぬな、貴族達も救済せねばならんようだ」
わしの
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