第四十話 独占慾
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近い。統治の成果が出れば貴族達にも良い影響が出るのではないか、エーリッヒはそう考えているようだ。領民達から搾りとるだけではなく領地を開発して豊かにする事で税の増収を図る、皆にそう考えて欲しいのだろう」
わしがリッテンハイム侯爵夫人に答えると皆が頷いた。
「それにあそこが安定すればカストロプ、マリーンドルフとオーディンの後背地が安定する事になる。その辺りも考えているようだな」
「なるほど、安全保障か。確かにそれは有るな、軍人である公が熱心になるわけだ」
リッテンハイム侯がウンウンというように二度頷いた。
「残念だな、エリザベート。そういうわけだからエーリッヒもお前を連れては行けん。まあいずれ休暇を取る時も有るだろう。その時だな、何処かに連れて行ってもらう事だ。何時になるかは分からんが……」
「忙しいですものね」
わしとアマーリエの会話にエリザベートが寂しそうな表情をした。
「そう言えばエーリッヒは近々ブラウンシュバイクに行かなければと言っていたな、領地の状況を確認したいと言っていた。その時に一緒に行ってはどうかな?」
「構いませんの?」
娘が嬉しそうな表情を見せた。やれやれ、そんなに嬉しいか……。
「構わんだろう、自領に戻るのだからな。但し、邪魔かもしれんがわしとアマーリエも一緒だぞ」
娘がまた頬を染めて“お父様!”と言ってわしを睨んだ。また皆が笑った、妻が苦笑しながら“貴方、その辺で”とわしを窘めた。
一頻り笑った後、リッテンハイム侯が話しかけてきた。
「領地に戻るか、来年度からは財産目録と決算報告を出さねばならん、それのためかな?」
「うむ、まあそんなところだ。昔と違って領主というのも楽では無くなった。隠居したのは正解かな?」
「確かにそうかもしれん、羨ましい事だ」
二人で顔を見合わせて苦笑した。隠居を羨ましいとは、お互い権力欲が無くなったのかもしれん。それだけ世の中が落ち着いたという事も有るだろう。それとエーリッヒのお蔭かもしれんな、出来る息子がいると確かに安心だ。細かい所はあれに任せてこちらは大まかに押さえておけばいい。
コーヒーを飲んでいるとリッテンハイム侯が話しかけてきた。
「ところで、ここ最近美術品の値が下がっているそうだがブラウンシュバイク大公はご存知かな?」
「いや知らぬ。……もしかすると貴族達が買うのを渋っているのかな」
収入が減った以上支出を抑えねばならん、それの所為か? そう思ったがリッテンハイム侯が首を横に振った。外れたか……。
「それも有る、だがそれ以上に美術品が余っているそうだ」
「余っている?」
「売り払っているのだよ、貴族達が。少しでも現金を多くしておきたい、借金を減らしておきたい、そう思っているのだ。おかげで美術品が値崩れしているらしい」
「
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