第一章その六
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る。
それを見る三人も何が起こったのかわかった。表情が暗くなる。
「・・・アラーニャ、行き先を変更だ。シャル村へ向かってくれ」
「・・・・・・はい」
巡査長も沈んだ声で答えた。車は静かに行き先を変更する。
シャル村も先の二つの村と同じく森に囲まれた静かな趣きの村だった。一面の麦畑が黄金色に輝いている。が今この村は悲嘆と恐怖に染められていた。
時間は夕食時になっている。周りは段々夜の闇に包まれようとしており太陽は沈み明けの明星が姿を見せている。
制服の警官達が右に左に動き回っている。蒼白になった村人達が立ち竦み家畜達もその動きを止めている。
その中を四人は進んでいた。進むにつれ村人の姿は減り替わりに制服の警官が増えていった。
現場のすぐ近くで一人の中年の女性がいた。蜂蜜色の髪をしたやや太めの女性だ。その身体をおもいっきり揺すってあらん限りの声で泣き叫んでいる。
「・・・被害者の親戚ですかね」
「・・・母親だよ」
署長が出て来た。
「学校から帰ってから出て来ない娘を寝ているのだと思い起こしに来たら骸と成り果てた娘がベッドにいたんだ」
「家の中でですか」
「そうだ。家の中で殺された」
「・・・なんという奴だ」
役も本郷も絶句した。その横で母親が夫に支えられている。その夫の目も泣いていた。
家は一階建ての質素な家だった。木で建てられ中には装飾も過度な家具もなくつつましやかである。
娘の部屋は奥にあった。そこには十人程の制服の警官と白衣を着た検死官が数人いた。
「ここですか」
部屋には勉強用の机と椅子、本棚には何冊かの本があった。思春期の少女らしく恋愛物の小説や詩集が置かれている。どうやらなかなかの文学少女だったらしい。
部屋の左隅にベッドがあった。大きめで頑丈な作りをしている。白いシーツが敷かれている。ただしそのシーツは鮮血で真っ赤に染まっていた。
ベッドの上に少女は横たわっていた。歳は十六程であろうか。母親と同じ蜂蜜色の髪をショートにしたボーイッシュな少女であった。瞳は黒く顔立ちも中性的で整っている。黒いTシャツと青のジーンズを着ている。脚はジーンズの上からでもかなり長くすらりとしているのがわかる。ただし胴についていれば。
両脚は根元から引き千切られていた。シャツはズタズタに裂かれ二つの小振りな乳房はどちらも喰われていた。禍々しい牙の痕が残っている。 首は半ばまで喰われておりほとんど胴から離れそうである。
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