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魔狼の咆哮
第一章その四
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 中年の男の声だった。デッセイ警部のものである。
「どうぞ」
 鍵を開け部屋の中へ案内する。コートとスーツに身を包んだデッセイ警部が入ってきた。アラーニャ巡査長も一緒である。
「警部、どうしたのです?巡査長まで」
「先程署長から指示がありまして」
「何でしょうか?」
「御二人にではありません。私共にありまして。今回の事件の捜査において私とアラーニャ巡査長は貴方方と行動を共にすることとなりました」
「どうぞよろしく御願いします」
 すっと手を出してきた。
「いえ、こちらこそ」
「改めてよろしく御願いします」
 四人は手を握り合った。野獣を倒さんとする戦士達の固い握手だった。
 四人はテーブルに着くと今後の行動について話し合った。警部の話によると独自の行動及び捜査を与えられているらしい。
「また随分と大胆ですね」
「うちの署長は度量が広い方でしてね。現場に任せてくれるのです」
「それに責任は自分が取るって言ってくれますしね。下の人間にとっては有難い上司ですよ」
「成程、それはいいですね」
「全く。その逆の人間はちらほら見かけますけどね」
 役と本郷が頷きつつ言った。
「では本題に入りましょうか。まず野獣の行動ですがこれを御覧下さい」
 警部は懐から何やら紙を取り出した。それはジェヴォダンの地図だった。地図のあちこちに黒いばつの字が書かれている。
「野獣が事件を起こしたのはこの印がある場所です」
 一つ一つ指差していく。見るとわりかし広い範囲に渡っている。
「かなり行動範囲が広いですね」
 左手の指を口に当てつつ役が言った。
「はい。特徴として一つの村で事件を起こすと別の村で事件を起こします。まるで犬がマーキングをする様に」
「マーキングですか、確かに」
「事件の間の日数はどんな感じですか?」
「それはまちまちです。三日続けて事件を起こす場合もあれば十日程開ける場合もあります。間隔はさ程問題ないかと」
「結局殺したい時に殺すのか。どうやら普段そんなに貧窮している訳でもありませんね」
「おそらく。食べるのに困る程の家なら生活保護を受けています。そういった家なら行動も掴み易いのですが」
「不審な者はいなかったのですね」
「はい。野獣は普段は我々の中に潜み生活しているのでしょう。そして人の肉を喰らいたくなった時に」
「動くのですか」
 本郷は地図に書かれている事件が起こった時刻を見ていた。
「犯行時刻もまちまちですね。昼に行われたり夜に行われたりしていますよ」
 それを聞いて役の表情が変わった。いぶかし気なものになった。
「昼、ですか?」
「はい」
「昼、ねえ・・・・・・」
「おっしゃりたいことは解ります。人狼の習性ですね」
 警部が言った。
「はい。人狼は普通夜に行動するのですが。満月
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