鬼神vs伝説
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ついにやってきた鉄心と千李の死合いの日。
川神院では朝から結界作りに修行僧達が追われていた。なんといっても鉄心と千李が本気で戦うのだ、結界を何重にもしておかねば周囲にも甚大な被害が出る。
因みに千李はというと庭で一人、目を閉じながら呼吸を整えていた。彼女からは静かに気が溢れ出し、周囲にはピリッとした空気が張り詰めている。
そのせいか彼女の周りに飛んでくる鳥もいなければ、虫の一匹さえも飛んでいない。それだけこの空間が異質なのだ。
するとそこへ、
「おかあさん」
瑠奈がおずおずといった様子で縁側からやってきた。
「瑠奈、どうしたの?」
千李はそちらに目をやると瑠奈に微笑みかける。だが瑠奈はそんな千李の顔を確認することもなく、一目散に抱きついた。
「おっと、瑠奈?」
怪訝そうに聞く千李の耳元で瑠奈が呟いた。
「おかあさん……どうしておじーちゃんとたたかうの?」
「……瑠奈は、戦って欲しくない?」
「うん。わたしはみんななかよくしてほしいから」
瑠奈の声は少しだけ震えていた。千李はそんな瑠奈を安心させるように背中を撫でる。
「瑠奈よく聞いてね、私とおじーちゃんは何も喧嘩をするわけじゃないの。これは死合い。互いの全力を尽くす決闘」
「けっとう?」
「そう、決闘。確かに決闘は瑠奈から見れば喧嘩をしているように見えるかもしれないけど。武術家からすれば己の力を試すことのできる絶好の機会なの」
千李は抱きつく瑠奈を一旦体から剥がし、自らの前に立たせるとその両肩を持ちながら優しく告げた。
「いい、瑠奈。貴女には見ていて欲しいの。私が戦う姿を、それを見て瑠奈が嫌だと感じれば今やってる武術の鍛錬はやめてもいいわ」
「……」
彼女の言葉に瑠奈は目に涙を溜めつつもしっかりと見つめていた。
「見ているときは辛いかもしれない、逃げ出したくなるかもしれない。だけど見ていて。今日ばかりは私の我侭、聞いてくれる?」
「……うん。みてる、おかあさんがたたかうところ」
目にたまった涙を流すまいと瑠奈は目を擦る。千李はそんな瑠奈の頭を優しく撫でる。
「ありがとう瑠奈。じゃあもう一回抱っこしてあげるから、ホラ」
千李は両腕を広げ瑠奈に促す。それに答えるように、瑠奈も千李の胸に飛び込んだ。そして瑠奈は千李の胸の中で小さく告げた。
「けが、しないで」
「ええ。約束ね」
千李は少し強めに瑠奈を抱きしめた。
瑠奈と手をつなぎながら舞台のところまでやってきた千李は、そこの広がっていた光景に顔を引きつらせた。
「あ、千李姉さん」
「大和……なして君がここにいるのかな?」
「学
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