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勇者の狂宴
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キリトは周りを見渡す。



いや、見渡して()()()()



キリトは失念していた。

たとえ死ぬ寸前まで衰弱していようとも、その実力がSAO時と比べて十分の一以下になっていようとも、自分が誰に喧嘩を売ったのかということを。

自分が、六王の第三席という身に余りすぎるほどの場所に収まったのは、ただの幸運だということを。

一瞬だった。

下半身がまるで、削り取られたように、食い千切られたように、なくなった。

咄嗟に翅を広げて体勢を安定させようとするが、バランスが数秒で崩壊する。ぐらりと視界が反転し、完全な錐揉み状態で落下していく。

衝撃はすぐだった。

元がもう何だか解らない瓦礫の山に頭から突っ込み、もがもがともがいてから手を突いて抜け出す。

すぐさま上空ををキッと仰ぎ見るのとほぼ同時、身体の前に構えた刃に衝撃が走る。

手元に視線を向けると、白き神装の刀身は大きな漆黒の砲弾のようなものを軋ませながら受け止めていた。下半身がまるっきり消失してしまっているが、込み上がってくる灼熱の痛覚を頭の隅から追い出して、腕に全力の力を込める。

ギリギリ、という軋んだ音とともにその砲弾の運動ベクトルを、何とか上に逸らせた。

ガリガリ、と何かが削れるような異音を刀身から発生させながら、その虚無の砲弾は上空へと打ち上げられ、雲を二つか三つほど霧散させながら天空へと消えた。

次弾が来る前に、キリトは地に手を着いて腕力だけで下半身が消失してしまっている身体を横回転させた。ごろごろ、と瓦礫の山の中を転がる。

先刻まで自分がいた場所には、もうあの漆黒の塊が命中していることだろう。ヒュッ、ヒュカッ、という変な音が前髪が触れ合うくらいの至近距離で響く。

しかし、立ち上がって体勢を立て直したいのは山々だが、立ち上がるための足も、それを胴体にくっつけるための腰もない。腹部から下が、綺麗に消失してしまっているのだ。

転がるたびに、水っぽい音が耳朶を打つ。それはあまりにも多量に出血している血液がもたらすものなのか、それとも────

「──────────ッッ!!」

キリトは直感的に、手の中にある剣をぶっすりと己の胸部に深々と刺した。

意図したわけではない。しかし、なぜか分かったのだ。こうすればよいと。

たとえば人間が生まれた時に、誰に教わるでもなく呼吸の仕方を分かっているように。

本能で、分かった。

何かが流れ込んでくる。

深々と指した傷口からは、痛みも、灼熱の熱感も発生しなかった。

それに反比例するかのように、下半身がごっそりとなくなった事が痛覚にもたらす痛みが、雪が降り積もっていくかのようにゆっくり、じんわりと無くなってい
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