第三章その五
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あてた。一撃で虎は沈んだ。
本郷は刀と短刀で、役は拳銃と式神でルーン文字の魔獣達を倒していく。その横で巡査長が得意の柔道と空手を披露している。
この部屋から獣達の姿が消え失せるのにさして時間はかからなかった。一匹の獣もいなくなるのを認めると一行は部屋をあとにした。
ベルサイユ宮殿において最も有名な部屋と言われているのが鏡の間である。ルイ十四世の居室として使われ華やかな舞踏会が催された場所でもある。深い奥行きを持ちその名が示す通り十七の窓と対になっている大鏡の他無数の鏡を持ち天井には美しく絢爛な絵と水晶のシャンデリアが果てしなく連なっている。広いこの宮殿においても特に装飾に工夫が施された部屋でもありこの宮殿を訪れた者は皆この部屋で感嘆の息を漏らすという。
この部屋はブルボン王朝、それ以降の多くの者達と共にフランス、いや欧州の歴史を見てきたがその絢爛さからか歴史の主舞台となったこともある。
第一次大戦終結後この宮殿に参加国の者が集まった。そしてこの部屋において勝者の連合国側は敗者のドイツとベルサイユ条約を結んだのである。ドイツに対し極めて過酷な要求を突きつけたこの条約はドイツとドイツ国民を苦しめその怨恨を宿らせることになる。それがナチスを産み出すもととなったのは歴史の皮肉であった。
その部屋に六人は入った。みらびやかな部屋は静寂によって支配されていた。
細く長い部屋は窓から月の光が差し込めている。鏡にはその光で部屋を照らす月が映し出されている。
「相変わらず胸の悪くなる色の月だな」
鏡に映る鮮血の様な色の月を見て本郷は言った。見ればその月が部屋の多くの鏡に映っている。
「最後の舞台の観客がこの月だけとは。いささか寂しくはありますが」
警部が洒落た言葉を出す。
「まあ美しき女神ですけどね」
役がそれに言葉を続ける。
「女神・・・アルテミスか」
カレーがふと気付いたかのような顔をした。
「狩りの女神でしたね。我々を守護してくれればいいですけれど」
中尉が笑みを浮かべて言った。
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