第三章その五
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た。
「空気投げか。まさかこの目で見るなんてな」
賞賛を込めた声で本郷が言った。
「柔道に伝わる伝説の大技の一つか。ヨーロッパでこの技を会得している者がいるだけでも驚きだけどな」
「実際に使ったことはほとんどありませんでした。あれだけの大物を倒すとなればそいじょそこらの技では通用しないと思いましたので」
「それにしてもこれだけの威力があるとはな。柔道とは怖ろしいものだ」
「でしょう?やってみるといいですよ」
石の破片の山と化したミノタウルスの石像を眺めつつ感嘆の言葉を漏らす警部に笑いながら言った。
「ふん、見事なものだな」
アンリの声が響いた。明らかに不快の色が滲み出ている。
「俺の芸術を壊してくれるとは。最早貴様等全てこの俺の手で屠ってやらねば気が済まん」
「ほお、じゃあ隠れてないでさっさと出て来たらどうだい」
本郷が口の端を歪めて挑発した。
「鏡の間だ」
アンリは怒りを抑えた声で言った。
「鏡の間に来い。そこでこの俺自ら相手をしてやる」
その言葉が終わると同時に幾何学模様の扉が開いた。
六人は戴冠の間へ向けて歩を進めた。罠を用心しその足取りは慎重だ。
どの間にもシャンデリアが飾られている。バロック絵画や金箔と共に部屋をみらびやかに飾っている。
美の女神の間に入る。そこには若き日のルイ十四世の銅像があった。
「まさかまた動いてくるなんてことはないだろうな」
本郷の予想は外れた。だが危機は頭上から来た。
豪奢なシャンデリアが降ってきた。六人は慌ててそれをかわす。派手に割れる音と無数の細かい輝きを発しつつシャンデリラは砕け散った。
それを合図に部屋の四方八方から異形の化け物達が姿を現した。おそらく庭にいた連中もいるのだろう。かなりの数だった。
それは狼や山猫の姿をしていた。だが決して獣などではないことはその紅く邪悪に光る眼が教えていた。
魔獣達は咆哮と共に一斉に襲い掛かってきた。まずカレーに襲い掛かる。
カレーが右手を横に振るった。氷の剣が宿る。
カレーは無言のまま氷の刃を振るった。まず狼の首が飛んだ。
だが首はそのままカレーへ向けて飛んできた。牙をむき喰いつかんとする。
カレーはその首を唐竹割で切り捨てた。二つに分かれた首が音を立てて床に落ちる。
山猫の爪をかわし身を捻るとその胴を両断した。鮮血を撒き散らしつつ山猫は床に転げた。
床に落ちた狼と山猫の骸がしゅうしゅうと音をたて溶けていく。そして割れた石の欠片となった。
「この連中もアンリがルーンの魔術で創った使い魔か」
「だとすればさして怖れる相手ではないな」
警部が蝙蝠達へ向けて銃を放つ。爆発に巻き込まれた蝙蝠達が燃え上がりつつ落ちる。
咆哮と共に襲い来る虎の首を蹴り上げると中尉は心臓に照準を
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