第一章その二
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した後で犯しつつ喰った。そんなとこですかね」
「御名答、その通りです」
「?」
後ろから声がした。デッセイ警部である。アラーニャ巡査長も一緒だ。
「皆と遊んでいて一人になったところを襲われたのです。そして喉を噛み切られ援けを呼ぶ事も出来ずここで誰にも知られることなく陵辱され貪り食われたのです」
「昼間にですよ、それも二時間かけて。まるでここには彼女以外は誰も来ないことを知っているかの様に」
アラーニャ巡査長が言葉を荒わげる。おそらくかなり正義感の強い人物なのだろう。この事件への憤りを隠そうともしない。
「顔見知りの犯行ですかね」
「それは我々も真っ先に考えました」
警部が役の説を打ち消した。
「ところがこんな小さな村では皆親戚みたいなものです。皆顔見知りですよ。その誰もが完全なアリバイがあるのです」
「一種の密室犯罪ですね」
本郷が呟いた。
「それに他の犯罪も同じ様に行われているのです。この地方全域に渡って。その全てが被害者ごとに全く異なる知人による犯行であるとはかえって非常識です」
「ですね。こういった連続猟奇殺人事件はいつも同一犯によるものです。人を惨たらしく殺した者は己のその醜い悪行を芸術か何かとうぬぼれるのです。そして更に芸術的に人を殺したいと思うものです。あの倫敦の切り裂きジャックの様に」
役が言った。
「そう。しかも遺体に残された精液や体毛から全ての事件の犯人が同一犯によるものであると判明しました」
「やはり」
「正直今の段階では人と狼が犯人か、それとも人のみかというと断定出来ません。モンタージュのあの化け物ではないと思いたいのです。あの野獣ではなかって欲しいのです」
そう言って警部はある山の方へ顔を向けた。巡査長もである。
その山は緑の森に囲まれた山だった。かってあの野獣が潜んでいたと言われる山である。山からは何も聞こえない。だが風に乗って獣の咆哮が聴こえた様に思えた。
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