第二章その十
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であった。
爪を思いっきり本郷に振り下ろす。この男だけは最初に始末せねばならなかった。そうでなければ己が誇りを保てぬ。
しかしそれは本郷もわかっていた。左上から来る爪をバックステップで避けた。
後ろに跳ぶと共に右手を背に進める。何かを掴み引く。
白銀の刃が引き抜かれた。月の光を反射しつつ闇夜に輝く。
「行くぞ」
抜くと同時に刀を左に持ち替えると右から左へ一閃させた。音より速くアンリのがら空きの胴へ襲い掛かる。
だがアンリはそれを上体をそらしかわした。バランスを崩すが両手を床に着き両脚を思いっきり空に蹴り上げる。
後方宙返りでかわした。そこへ懐から拳銃を取り出した役が攻撃を掛ける。
数発の銃弾がアンリへ向けて放たれる。銀の銃弾だ。アンリはそれをバク転し着地と同時に上へ跳び上がり避けた。
「素早いな」
役の表情は変わらない。ただ銃口をアンリへ向けているだけである。
「あの村の時と同じだな。人間にしてはやるな。だがそれでは俺は倒せん」
「じゃあこれはどうかしら」
中尉がコートのポケットから何か取り出した。そしてアンリへ向けて投げ付けた。
「ムゥッ!?」
それは極細のワイヤーだった。先が輪になっている。それがアンリの黒く太い首に入れられた。
「唯のワイヤーじゃないわ。鉄すら切断する特殊金属で編まれた特別なワイヤーよ。これで倒れない者はいないわ」
左手でまとめ右手で引いている。両手には皮の手袋が嵌められている。
「さあどうかしら。そろそろ首のところが苦しいのではなくて」
アンリを見据えつつ口の両端だけで笑う。だが当のアンリに苦しそうなあおの素振りは全く無い。
「この程度か、軍の特殊部隊というのは」
今度はアンリが笑った。にやり、とした邪悪な笑みだった。
「何!?」
ワイヤーをその黒い右手で掴んだ。そして思いっきり引いた。
ぶちり、と音を立てワイヤーが引き千切られた。次に首に残るワイヤーも引き千切り床に投げ捨てる。
「な・・・・・・!」
これには中尉も目をむいた。
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