第二章その九
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「・・・それは一体どんな話です?」
本郷の顔からしかめが消えた。
「おそらくカレー氏に、いやカレー家に深く関係のある事だろうな。どちらにしろカレー氏とあの人狼は深い関係がある」
「・・・やはりカレー家は」
「断定は出来ない。だが人の世に災いをもたらす黒き者達であれば」
「・・・ですね」
二人の心に秘められた刃が白く輝いた。
その日の夜中尉は屋敷の中を歩いていた。当然捜査の為だった。
「昼と夜では見えるものが異なる」
そう言う者がいる。事実昼の世界と夜の世界では支配する神が異なり棲む者達も異なる。濃紫の中に棲む者達は月の朧ろ気な光を愛する者達なのである。
屋敷の中は燭台の火で照らされている。ぼうっとした弱い光が廊下の左右に連なっている。
その中を中尉は一言も発さず足音すら立てず進んでいる。まるで猫の様にしなやかな動きである。
息一つの音さえ漏らさない。気配も消している。
燭台の火に左右から照らされた顔には表情が全く無かった。仮面の如き白くそして血の気が無い。
カレーの執務室の前に来た。何やら怪しげな気を察した。
「・・・この部屋の中か?」
心の中で喋った。すすす、と音も無く扉の前へ進む。
ズボンのポケットから針金を出した。その針金をドアの鍵口に入れる。
程なくして扉は開いた。音は立てないようにした。
僅かに扉を開け部屋の中へ入る。入りつつ左胸の懐へ手を入れ拳銃を取り出した。
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