第一物語・後半-日来独立編-
第五十四章 君の元へと《1》
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えと」
言うと、実之芽の身体中に繋がれていた流魔線が消えていく。
同時に地面に刺さっていた棒も、同じく塵となって消えていった。
全ての流魔操作でつくったものが消えると、セーランは実之芽に向かってこう言った。
「委伊達・奏鳴は絶対に救うから心配すんな。後、救出したらさ、奏鳴を日来に乗せようと思うんだわ。辰ノ大花から離れて、世界を巡って、あいつが知らなかった世界を見せてやりたい。
だからもし、奏鳴が日来に乗ることになったらお前はどうするか、考えておいてほしい」
「付いていってもいいの?」
「お前がそれを選んだらな。手続きは後ですりゃあいい。だけどよく考えておけよ。もし辰ノ大花から奏鳴が抜け、お前も抜けると覇王会会長と隊長、後確か指揮官もだったな。その三つの役職者が覇王会から抜けることになるんだからさ」
「言われなくても分かってるわ」
「そうかい。なら行ってくるわ」
左手を上げ、そう言ったセーラン。
対する実之芽は身体を動かすことが出来無いため、顎で行くようにと指示を出す。
それを笑い、理解したセーランは何も言わずに走り去って行った。
ある程度の距離から流魔操作によって宙を駆け、その場から姿を消した。
後ろから見ていた実之芽は、セーランの姿が見えなくなるとほっと一息付く。
特に意味の無い一息だ。
息を付くのに下げた顔を上げて、なんとなく見上げる空。
「なんであんな人が、覇王会会長なのか、少し解った気がするわね」
気付けば自分は日来の長と話しをしていた。
その間、あれ程気に食わなかった日来の長のことをそう思わなかった。
とても不思議だった。
考えるのはそれまでとして、ここからが本当の勝負。
まず解放が始まる前に解放場へと辿り着かなければ、今までやって来たことが無駄になる。
もっと早く行かせていた方がよかっだろうか。
いや、今までの自分は彼のことを気に食わない奴だと思っていたのだ。そんなこと出来るわけがない。
久し振りに馬鹿になって戦って、子どものように叫んだ。
仲間内に見られていたら恥ずかしいが、お陰で心の靄が晴れた気がした。
「そう言えばまだ敵が待ち構えていること言ってなかったわね。まあ、いいっか」
開き直る実之芽。
彼なら別に大丈夫だろうと、確信も無いのにそう思う。
大丈夫、きっと辿り着ける。
あんな人だが、それでも学勢院の覇王会会長なのだ。
身近な者では駄目ならば、最後の選択肢として第三者である他人に任せよう。
それでも駄目ならば……、いや、そんなことはない。
きっと彼ならば、と信じることを貫いた。
自分の意志が信じろと、自分自身に訴えていからだ。
そして想いを、託した。
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「正面に日来長発見! 総員構え――!」
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