第一物語・後半-日来独立編-
第五十四章 君の元へと《1》
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緒にしないで。私は私なりに頑張ったのよ、無駄だと解ってることでも、頑張って……。家系にとらわれていたのかもしれないけど、それでも私の意志でしてきたの。それを否定されてほしくないわ……」
何故、自分は泣いているのか本人は分からなかった。
涙腺が緩くなったように、気付けば涙が肌を伝っていた。泣き出したのを見て、慌ててセーランは慰めに入る。
「ご、ごめんて。否定して悪かったよ、お前はお前なりにそうしてきたんだよな。ああ、構わねえよそれで。立派だ立派! だから泣かないでくれよお」
「何も解ってない。なのに、あそこまで言われるなんて……酷過ぎるわ」
「ごめんよお、頼むから泣き止んでおくれよお。親に異性は泣かせるなってキツく言われてたんだよお。女の子泣かせたことがバレたら絶対叱られるからよお」
「嘘よ」
「へ?」
御雷神|《タケミカヅチ》の力を無理に使ったため、腕が動かず涙を脱ぐえないので涙が流れるなかで言った。
馬鹿みたいに唖然とするセーランがおかしくて、肩を小さく震わせる。
「おちょくられるのは気に障るから、おちょくり返してやったのよ。まんまと騙されたわね」
「く、悔しいが一本取られたぜ」
「でも、涙は本物だから……」
「おうよ」
もう馬鹿というよりアホの方が近いのかもしれない。
騙された後はまた騙されるかもと思う筈たのに、涙は本物だということを信じた。
間違ってはいない。
この涙は悔しさから出たもので、だが騙された後に信じようとはしないだろと思う。
「あ」
一文字が口から出た。
「どうしたんだ」
「なんでもないわ」
「そう言われるとすっげえ気になるんだけども」
「レディには隠し事の一つや二つはあるものよ。これから付き合うのだったらそれくらいは覚えておきなさい」
「性格変わったか? 急に俺に対する当たりが優しくソフトになった気がするんだが」
「気のせいよ。ほら、さっさと行きなさい。もうすぐ解放の時間よ」
「嘘じゃないよな?」
そこを疑うのかと、半目で見詰める。
殴られると思ったセーランは一気に距離を離し、安全な位置まで避難した。
離れたが、声は届く範囲内だ。
息を吸う実之芽は少し大きな声で、離れたセーランに向けて言葉を放つ。
「解放は一時からよ。もう数分も無いわ」
「本当だったのかよ! くそ、なんでもっとやられてくれなかったんだよ」
「殆ど貴方が話してたのが原因だと思うけど。変に格好付けるからよ」
「俺的にいい感じだと思ってたのに! くそ、まだまだ演技に磨きを掛ける必要があるな」
日来の長も苦労するものだと、見てて思う。
立ち上がり、解放場を目指すために北側を向くセーラン。
気付いたように振り返り、
「お前の動き封じるための流魔線、もういらねえよな。切り離さね
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