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魔狼の咆哮
第二章その八
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大統領の、ですか。話はそこまで」
 署長をはじめ警官達の顔が暗くなった。
「本来ならば特殊部隊を一個小隊派遣する予定だったのですがこちらの署との関係を考え私一人を派遣することになりました。以後貴方達の指揮下に入ります」
「私達のですか?」
 思わず署長が声を上ずらせた。とかく軍人というのは指揮について五月蝿いものであり特に警察と一緒になった場合はその指揮を巡って話がこじれるものである。軍は自分達の中に警官達が入るのを好まない。非常時において軍の将校達は警官を指揮する権限を与えられているケースもある。そういったことから軍と警察の関係というのはどうしてもギクシャクし易いのだ。
 今回もそれが危惧された。派遣されるのは一人といっても捜査のやり方や指揮を巡って問題となることが署長の心配の種だったのだ。それがあっさりと片付いた。しかもそれは当の軍人の方から折れてくれたのだ。
「意外ですか?」
「い、いやそういう訳ではないですが・・・」
 そう弁明しつつも声がぎこちなかった。
「この事件に関してはそちらの方が捜査も進んでおり知識も豊富」です。ましてこの様な惨たらしい事件は一刻も早く終わらせねばなりません。いつもの様に指揮がどうとか管轄がどうとか言っている場合ではないのです」
 中尉は毅然とした態度で答えた。
「カレー氏には既に挨拶を済ませました。私の部屋はこの階の右の一番奥の部屋です。今から荷物を置きにいきます。何かあればすぐにご連絡して下さい」
 そう言うと中尉は敬礼し部屋を後にした。
「えらく話のわかる中尉ですね」
 役が署長に話しかけた。
「フランス軍のエリート将校というからどんな高慢なのが来るかと思っていたのですが」
 少し悪戯っぽく笑った。
「そちらにも我が国の軍人の高慢さは知れ渡っていますか」
 署長もそれにつられて笑った。ただこちらの顔はやや引きつっていた。
「まあ数少ない軍事関係の雑誌やそれよりは少しは多い軍事関係の書で」
「こういった話はすぐに広まりますな。その通りです。我が国の将校は高慢でプライドの高い者が多いのです」
「それで強ければ文句っはありませんけどね」
 巡査長が両手をぽんと投げ出す格好でおどけて言った。
「徴兵制と外人部隊で数はあるし装備も他の国にやけに自慢してますがその実負けてばっかりで。口程にもない奴等だとドイツ人やイギリス人達に馬鹿にされているのです」
「おやおや」
「噂ではそちらの軍人さん達はえらく腰の低い方達ばかりとか。それ位とは言わないまでもその十分の一程検謙虚であってくれれば」
「まあ軍人というか自衛官というかあいまいな存在ではありますけどね」
 巡査長の言葉に本郷は苦笑して答えた。
「それは知っていますよ。日本のアニメでも出てますし」
「色々御覧になっているんですね
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