第四十九話 本当は臆病だったのかも
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いが……。
「彼らが恐れ、憎んだのは何だったのか? 分かりますか?」
俺が問い掛けるとヴァレリーとヒルダが顔を見合わせたがおずおずとヴァレリーが答えた。
「……衆愚政治の復活、でしょうか」
「そうですね、衆愚政治だけとは限りませんが政治的、社会的混乱だと思います」
俺が肯定すると二人が頷いた。
「彼らは銀河連邦末期の政治的、社会的混乱をルドルフ・フォン・ゴールデンバウムというカリスマの出現によって解消し安定させることが出来ました。但しそれは本来なら許されない首相と国家元首の兼任、そして終身執政官というこれも本来なら有り得ない役職を創設しての事です。言ってみれば非合法な手段によってルドルフに権力を集中させ政治的、社会的安定を作り出した、それ無しでは為し得なかった……。その事は誰よりも彼ら自身が分かっていたのだと思います」
「……」
フリードリヒ四世が似た様な事を考えている。門閥貴族、政府、軍、身動きできない中敢えて後継者を決めずに内乱を誘発した。そうする事で唯一無二の権力者を作り出した。絶対的な権力を持つ人間を作り出す事でしか帝国を再建できないと考えた……。
民主共和政は一人の人間に権力を集中させない政治制度だ。複数の人間、組織に権力を分かち与え互いにチェックさせる事で権力の暴走を抑えている。しかしそれだけに思い切った政策が採り辛い、大胆な改革がし辛い制度でもある。衆愚政治に陥った銀河連邦がルドルフ無しではそこから抜け出せなかったのも止むを得ない事だったともいえる。
「もしルドルフ亡き世界において衆愚政治、いや衆愚政治だけではありませんが政治的、社会的混乱が発生したらどうするか? 彼らはその事を悩んだと思います。混乱収拾の方法は有ったのです、もう一度首相と国家元首の兼任を認めるか、終身執政官を作り出せば良い。しかし、両方とも非合法な手段です。彼らは連邦市民がそれをもう一度許すかどうか確証が持てなかった。そしてルドルフ程のカリスマ性に溢れた人物が、連邦市民の支持を得られる人物がその時に現れるという希望も持てなかった……」
皮肉だった。ルドルフ・フォン・ゴールデンバウムが強力なリーダーで有れば有るほど、終身執政官という職が有効であればあるほど当時のルドルフとその周囲は本来あるべき政治体制、首相と国家元首の分離、つまり権力と責任の分散に疑問を抱かざるを得なかっただろう。それは衆愚政治の温床ではないのだろうかと……。
「最終的に彼らが選んだ道は現在の政治体制を常態化させる事だったのだと思います」
「……それが銀河帝国の成立ですか……」
ヒルダが呟いた。ヴァレリーは溜息を吐いている。
「私はそう思います。彼らに野心が無かったとは言いません。しかし野心や虚栄心だけで帝国を創ったのではないと思うのですよ」
俯い
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