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銀河英雄伝説〜悪夢編
第四十九話 本当は臆病だったのかも
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ている。

「フロイライン・マリーンドルフ、フィッツシモンズ准将、ルドルフ・フォン・ゴールデンバウムは何故自らを神聖不可侵なる銀河帝国皇帝と称したと思います?」
俺が問い掛けるとヒルダは困ったような、ヴァレリーは訝しげな表情を見せた。あ、呼び捨ては拙かったかな、まあいいか。

「フロイラインには答え辛いかな。准将、如何です?」
「権力を得て思い上がったから、傲慢になったから、同盟ではそう言われています」
そうだろうな、同盟市民ならそう思うに違いない、当たり前の事だ。だが帝国臣民にしてみればルドルフを非難するのは難しい。

「閣下は如何思われるのです?」
ヒルダが問い掛けてきた。好奇心、だけではないだろう。将来俺がどんな皇帝になろうとしているのか、どんな政治体制を目指すのか、それを示す手がかりになると思っているのかもしれない。

「私も思い上がりから、傲慢になったからだと思っていました」
「思っていました? では今は違うのですか?」
ヴァレリーが不思議そうな表情をしている、ヒルダも同様だ。どうやら彼女もルドルフは思い上がりから、傲慢から神聖不可侵を唱えたと思っている様だ。本当にそうなら楽なんだがな、ルドルフを軽蔑するだけでいい。

「今は違うかもしれないと思っています」
「……」
「彼は元々は銀河連邦の一市民でしかありませんでした。当時の銀河連邦は民主共和政による統治を行っていましたが民主共和政は衆愚政治と化し政治的、社会的混乱は酷いものになっていました。准将ならその辺の事は良く知っているでしょう」
俺が言うとヴァレリーが頷いた。

「彼は首相になり本来なら許されない国家元首を兼任し終身執政官になりました。そして神聖にして不可侵なる銀河帝国皇帝になった。もし終身執政官で止めておけば多少の批判は有っても連邦を再生させた大政治家として称えられたと思います。それなのに何故銀河連邦を廃し銀河帝国を創立したのか、何故神聖にして不可侵なる銀河帝国皇帝になったのか……」
ヴァレリーもヒルダも困惑している。

「何故ルドルフは一線を越えたのか? ただの野心、虚栄心がその理由だったとは思えないのですよ……。彼を皇帝にしたのは連邦市民でしたが彼の周辺には大勢の協力者がいた、彼と共に国家を健全な姿にしようとした人達です。何故彼らは連邦を裏切るような行為をしたルドルフに協力したのか……。騙されたのだとは思えません、知っていて協力したのではないか、私はそう思うのです」

新説だな、ヴァレリーもヒルダも驚いている。無理もない、当時の政治指導者達が皆で銀河連邦を裏切った、いや民主共和政を捨てた、俺はそう言っているのだ。だが自分が権力者になってみるとルドルフを簡単に非難出来ないんだ。或いは俺はルドルフじゃなくて自分を弁護しているのかもしれな
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