第1部:学祭前
第2話『秋雨』
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てもいいですから……学祭のときは、どうですか……」
「学祭か……午後は、その……軽音部のライブに行きたいから、その後でいいかな」
「私も、ライブを見ます。誠君が行きたいなら、一緒に、行ってみたいです。それから、お互いどんなものだったか話し合って、それから……」
ライブの後なら、うまくごまかして、世界から離れられるかもしれない。誠はそう思ってから、
「ライブの後なら、大丈夫だよ。」
「じゃあ、学祭の日、待っていますから……」
言葉は、周りをちらと見てから……
誠の口にキスをした。
…………
しばらく、誠は何もしゃべれなかった。
「これから……宜しくお願いします」
言葉は、満面の笑顔で言い残すと、駆け足で指導室を出て行った。
誠は、ぼんやりとしていた。
男に触れ合うことを、あんなに嫌っていた言葉だったのに……。
あまりに唐突なことだったので、その様子を、クラスメイトの甘露寺七海が見ていたことに、気付かなかった。
教室では、学級委員を中心にクラスの皆が、学祭の出し物について話し合っていた。誠は、まだ戻っていない。
「世界! 世界!」
七海が息せき切って駆け付けた時、世界は澤永泰介と話していた。
「どうしたの、七海?」
世界は、目を丸くして尋ねる。
「あたしの中学の同級生である桂がさ、伊藤にキスしてたんだよ!」
「か……桂さんが……?」
「そうだよ……あのフェロモン女、よりにもよってあんたの彼氏を……」
「ま、まあまあ。桂さんは以前、誠と付き合ったことがあるし……」
世界は、苦笑いを浮かべながら言った。
「何言ってんだよ。あいつ、男受けばかり良いからさ。伊藤だってどう転ぶかわからないよ。」
七海は、女バスのキャプテンということもあり、人脈が広い。
「そうだ、澤永! ちょっと耳を」
「ん?」
七海が泰介に、何かをそっと耳打ちする。泰介はたちまち喜びの表情を浮かべ、
「よーし、やったるぞ」
と、つぶやく。
それをするどく聞いて、世界は七海に尋ねてみた。
「何を話したの、七海……?」
「大丈夫、桂をあんたたちのところへ寄せ付けないように、根回ししただけだから悪いようにはならないよ。」
根回し、と聞いて、世界は嫌な予感がし、
「あ、あんまり手荒なまねはよした方が……そりゃあ、誠を取られたくないけれど……」
おっかなびっくりで、言った。
「いやいや、男ってもんは胸さえでかけりゃ、すぐコロッといっちまうからさ、足止めしておくにこしたことはないよ」七海は平然と言ってから、「じゃあ私、女バスの集まりがあるから、行くね」
「あ……忙しいのにごめんね」
世界は、多少心配の入った笑顔で、七海を見送った。
「世界」
中学生のような、小柄でスレンダーな体型、赤い
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