第1部:学祭前
第2話『秋雨』
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。でもそうやって女は美しく磨かれていくもの」
「いーやーだー、いーやーだー」
机に突っ伏したまま、唯は地団太を踏んだ。
「はあ……」ムギがティーカップを口に近付けながら、「恋は盲目ねえ」
「そういえば、ムギ先輩、何持って来たんですか?」
と、梓。
「榊野学園に関連する資料よ。生徒たちと交流するわけだから、むこうの生徒たちに関する情報を知らないと」榊野の学内新聞をめくり、運動部の記事を見せて、ムギは言った。「この人、知ってる?」
ムギが指さした写真に写っているのは、短髪でボーイッシュなルックスの少女。
「誰ですか、この人?」
「この人、甘露寺七海といって、バスケの特待生として榊野に入った人なのよ。彼女が入ってから、榊野の女バスはベスト4まで進出したり、破竹の勢いと聞いているわ」
「す、すごい……」
梓も、うなった。
「私、この人に恋してしまったの……」
ムギは顔を赤らめ、ぽーっとした表情になる。
唖然とする一同。
ムギの百合好きは、いつものことだが、それが本番で出るとまずいのでは……?
しかも、『異性との付き合い方云々』言ったのは誰だ。
「勉強熱心だな、ムギは」
律は手持ちの本をパラパラめくりながら、とりあえず言った。
梓は、律の本をまざまざと見つめ、
「『男を口説く方法』、『血液型と理想の彼氏』、『本当に気持ちの…』、って、なんでこんな気持ち悪い本まで持ってきてるんですか!?」
「おいおい、せっかく彼氏を作るんだから、いい進展といい思い出をつくらないと。大体、彼氏とのアレは、大人への通過儀礼みたいなもんだぜ? バンジージャンプだぜ?」
あっけらかんと、律は答える。
「何言ってんですか、律先輩! 17歳でそれはいけませんよ!! それは18歳を超えてから!!」
まじめな梓は、思わず大声を張り上げた。律はそれを聞き流し、
「かたいこと言うなよ。ついでに彼氏1号は、映画版ハリー・ポッター最終章を、私と一緒にみることが可能でっせ」
「恋愛のナンパの考えてないで、もっと真剣に、ライブのことを考えてくださいよ、部長さん!」
2人のやり取りを聞きながら、唯は『大人』と聞いて胸を突かれた。
子供っぽい。
これは幼いころはもちろん、軽音部に入ってからも続いた、唯の評判だった。
正直、大人になりたいという思いが、なくもない。
仮に女が、男との恋愛で、その結果のことで、子供から大人になれるとすれば、できれば成し遂げたいとは思っている。
もちろん、相手はあの人がいい。
横恋慕だと、わかっていても。
残る澪は、相変わらず、ぼんやりとしている。ただし違うのは、いつものように浮かない表情ではなく、ムギと同じ、誰かを考えているような、ポーっとしている表情だということ。
「
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