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銀河英雄伝説〜生まれ変わりのアレス〜
昔話
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くらいしか負けたことがないんじゃない?」

「いや、ワイドボーン先輩にも勝てなかったな」
「あの人は天才だからね」
「ワイドボーン先輩ですか」
「興味あるの?」
「ええ……」

 ライナは静かに頷いた。
 ライナが入学して、比較されるのはワイドボーンが同学年であった時の成績である。
 一部においてはライナが、そして他はワイドボーンが優れており、顔こそ知らないものの名前は良く聞かされていた。
 果たして二人が同じ時代であれば、どちらが主席であったかなどと直接言われたこともある。

 だから気にならないわけがない。
 そう答えて、ふとアレスを向いた。
「その興味があるというだけです」
「ワイドボーン先輩は有名だからね」

 苦笑をしながら、アレスはアイスティを飲みほした。
 ずずっとすする音とともに、お盆を手にする。
「そろそろ消灯も近いだろう。そろそろ失礼するよ」
 言葉にライナの顔に、一瞬叱られた子犬の様な表情が映る。

 止めようとした言葉は、しかし、消灯一時間前を告げる鐘に遮られた。
「明日も訓練だからな――ゆっくり休むと良い。フェアラートさんもな」
「ええ。先輩、ありがとうございました」
「随分と余裕なのですね」

 呟いた言葉に、アレスは笑みを浮かべ。
「御機嫌よう」
「――御機嫌よう」
 そんなアレスの言葉に小さく笑いながら、ライナが言葉を返した。

 軽くスーンを小突きながら、去っていく姿に、ライナが小さく息を吐く。
 再び食べたトマトパスタは、既に冷めていた。
 そんな様子を、隣でフレデリカが笑っている。
「何が面白いのですか?」

「ごめんなさい。でも、わかりやすいなぁって」
「何がです」
 驚いたライナに、フレデリカはただ楽しそうに微笑んでいた。


 少し離れたその席で、女性に囲まれながらウィリアムは笑っていた。
 一人に誘いを断れたところで、彼の誘いを断る人間は少ない。
 媚びるような言葉に、ウィリアムは楽しそうに微笑みながら、横目で見る。
 くそっ。
 それは言葉にも表情にも出ず、ただ彼の心の中で響いていった。



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