昔話
[5/7]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
すか」
「どうぞ」
差し出されたアレスの手に、静かに礼をいって、フレデリカの隣に腰を下ろす。
ライナは緊張とともに小さく息を吐きだした。
そんな様子に、アレスはアイスティーを飲み干す。
そして。
「友達も来たところだし、俺は先に失礼するよ。ごゆっくり」
「あ……」
小さく出した声に、フレデリカがライナを見る。
視線の先は正面……席を立とうとした、アレスの方だ。
慌てて、フレデリカが咳払いをした。
「まだもう少し話しませんか?」
「いや。でも、邪魔だろ?」
「大丈夫です、ね?」
「ええ!」
「ああ。そう……?」
頷いたライナに、アレスは浮かせかけていた腰を下ろす。
「さ、先ほどはどんな話をされていたのですか?」
「どんなと言われても、大した話でもないけど」
「そうですか。でも、お二人は楽しそうでした」
「そんな事ないよ」
慌てて否定してから、フレデリカがしまったと表情を変えた。
申し訳なさそうにアレスに頭を下げる。
「ご、ごめんなさい、先輩」
「いや、いい」
謝罪をすれば、アレスは小さく苦笑している。
本人は本命がいるのに、妙な噂が流されて困るのだろう。
少なくともアレスと噂になって、良い事など何もないような気がする。
そんな事を考えれば、飲み干したアイスティーの氷をストローで混ぜた。
様子に、ライナが気づく。
「今日は紅茶なのですね」
「ん?」
「この前はコーヒーを飲んでらしたので」
「そう言えば、そうですね。というよりも、先輩は食事中は紅茶ですよね」
「ああ。別にコーヒーが好きなわけじゃないからな」
「では、どうしてです?」
「ゲン担ぎのようなものだ。勝った後に苦いものを口にすると生きてるって気がするから」
「よくわかりませんね」
「別にわかって欲しくてやっているわけではないさ」
「しかし、理解しました。マクワイルド先輩には、次の戦いではコーヒーを諦めていただきます」
「ほう、勝つ気なのか?」
「いえ。自動販売機からコーヒーを撤去しようかと」
「それ、ヤン先輩より酷いな!」
「冗談です」
くすりと笑えば、ライナは湯気の立つトマトパスタにフォークを入れた。
ゆっくりとして、しかし綺麗にフォークをパスタに巻き込めば、小さく口にした。
もぐもぐと口を動かせば、集中する視線にライナが気づく。
すでに食事を取り終えている二人だ。
必然的に集中した視線に、ライナはトマトパスタを選択したことを後悔した。
なぜ、シンプルなパスタではなかったのかと。
口にトマトソースはついていないだろうか。
心配すれば、顔を隠すように俯き、何とかトマトパスタを嚥下した。
そこから顔をあげられない。
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ