昔話
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フレデリカの興味は、今考えれば当然のことながら、ヤン・ウェンリーの学生時代だ。
エルファシルでの出来事を懐かしそうに話していた。
こちらも一学年の時に対戦しているため、彼女はヤンの学生時代のことが聞きたいようだ。
そんな話題について、別にアレスは嫉妬で話さないわけではない。
話せない。
そもそもヤン・ウェンリーは学生時代に特に目立っていたわけではない。
有名なのはワイドボーンとの一戦ではあるが、他は寮から出ていく時に三トントラックが寮とゴミ捨て場を三往復したらしいとか、興味のない教科が悪すぎて、優等生がそろう戦略研究課程で初めて退校候補に名前を連ねたとか――良い話題は少ない。
さすがにそれを話すのはどうだろう。
正直に話してもいいが、それでヤンを陥れようとしたとか勘違いされたら、悲しすぎる。
食事という時間稼ぎをしているわけであるが、フレデリカは食事の手まで止めてアレスを凝視している。
薄いローストビーフはすぐに口でなくなり、アイスティーを口に含んだ。
「そうだな。他には紅茶が大好きだった――好きすぎて、戦術シミュレーター前の自動販売機の一列を全部紅茶に変えてたな」
「ヤン少佐は紅茶が好きですもの。私も文句を言われましたことがありますわ。でも、そんな事が出来るのですか?」
「うまく納入業者が言いくるめられたみたいだね。すぐに業者に元に戻させたけれど」
渋い顔をするアレスに、フレデリカは笑い声を立てた。
そんな笑顔を見ながら、アレスも柔らかく息を吐く。
あとは。
「今まで対戦した相手で一番強かった――無敗の英雄は、やはり無敗の英雄だった」
それは独り言のように、そっと呟かれた。
+ + +
手にしたトマトパスタを持って、ライナは席を探した。
対戦によって訓練時間が延びた今では、混雑時間から外れたようで席に座るものはまばらだ。
これなら静かに食べられそうだ。
これからはこの時間に食事にしようかと考えた。
入浴時間が決まっていなければ、それでも良かったかもしれない。
だが、定められた入浴時間は、一学年はもっとも遅い。
あまく遅く食べれば、今度はそれだけ入浴の時間が減ることになる。
悩ましいところだと手頃な席を探して、ライナの視線が止まった。
窓際の席――そこに先客が二名いる。
一人はライナの同級生であり、もう一人は。
呼吸を整え、ライナはその席を目指す。
「お隣よろしいですか?」
「え?」
対面の席に座ったアレスに対して、質問をかけようとして、フレデリカはライナを見る。
その様子に驚いた様子であったが、すぐに頷いた。
「もちろん、どうぞ」
「ありがとうございます。先輩も……よろしいで
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