昔話
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勝できたかもしれないし、コーネリア先輩ならコンピュータの機動すら上回って艦隊を動かしたと思う。アッテンボロー先輩だったら、いつの間にか勝っていた気もするし、ヤン先輩はどうだろうな。僕にはその勝ち方すら想像できないや」
「随分と褒めるのですね」
「ずっと見てきたからね……そうずっと」
静かに目を伏せたテイスティアが何を思ったのか。
ゆっくりと黙る先輩に、かける言葉もなく、ライナは言葉を待った。
「追いつきたくて、でも追い越せなくて。今まで僕はずっと見てきた」
思いを言葉にして、テイスティアはゆっくりと首を振った。
「そして、そんな先輩方にアレス先輩は一度も負けたことがない」
「目標なのですか」
「目標とはちょっと違うな。そう――これは僕の宿題……」
「宿題……?」
「今から批判的な話をしていると、またフォーク先輩の怒りを買いますよ。テイスティア先輩」
テイスティアの頭の上からの言葉に、二人が声の方を向いた。
長身の男性――ケビン・ウィリアムが覗き込むようにして、片目をつぶる。
頭を押さえていたテイスティアを押しのけて、ケビンがライナとの間に割り込んだ。
ライナが眉をひそめたことも気づいていない様子。
「確かにコンピュータが相手だというのはつまらないのはわかるよ。どうかな、一戦お付き合いいただけませんか、お嬢さん?」
仰々しい様子で頭を下げる様子に、ライナはテイスティアを見る。
タイミングを失ったテイスティアは苦笑を浮かべており、再び話をするつもりはないようだ。
ライナは小さくため息。
「それではよろしくお願いいたします、先輩」
苛立った心を沈めるために、ライナはウィリアムの言葉に髪をかきあげて答えた。
+ + +
『……星系の戦闘結果。青軍、ケビン・ウィリアム。赤軍、ライナ・フェアラート。損耗率、青軍58.1%、赤軍21.0%。ウィリアム旗艦の撃沈により、ライナ・フェアラートの勝利です』
三十分とかからずに終わった戦いに、ライナは筺体から姿を現した。
そこにアレスとの一戦で見せたような高揚や悔しさは微塵もない。
機械と戦った後の様な表情に、外で見ていたテイスティアは表情に呆れを見せる。
それでも一応とばかりに、近づいてライナに声をかけた。
「御苦労さま」
「上手くいかないものですね」
そんな労いの言葉に、ライナは浮かない返事をした。
テイスティアが疑問を浮かべる前に、ライナは一人首を振った。
「先日にマクワイルド先輩と戦った時よりも、私の方が時間もかかっていますし、損傷艦艇も多い。あの方と私の実力差は、マクワイルド先輩と私よりも離れていないということなのでしょうか」
そんな独り言に、テイスティアは頭をかいた。
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