第二章その四
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咲いている。
その庭園のあちこちに黒いスーツを着たガードマンが立っている。銃で武装しており見るからに獰猛そうなドーベルマンを連れている。
「まるで南米の麻薬王みたいな警備だな」
彼等に聴こえぬように小声で本郷が呟いた。
「聴こえるぞ、滅多なことは言うものじゃない」
役がたしなめる。
屋敷はまるで宮殿のようだった。白く荘重な建物が目の前にそびえ立っていた。
「事件はこの中で起こったのか」
「よくもまあ忍び込めたものですね」
話しつつ歩いていくと門の前に一人の小柄な壮年の男性が立っていた。銀の髪と髭を持つタキシード姿の男である。
「ようこそいらっしゃいました。この家の執事のダングラールです」
男は会釈をして名乗った。自然でそれでいて優雅な物腰である。
執事がドアをノックすると黒く分厚い門が鈍い音を立てて開かれる。彼に案内され署長を先頭にして一同は中に入っていく。
屋敷の中は重々しい造りだった。壁は灰に近い白であり絨毯はくすんだ赤であった。何処か血を思わせる。全体的に薄暗いが壁に掛けられている燭台には火は点けられていない。
前と左右に廊下がある。前には上へと続く木で造られた螺旋階段がある。執事は螺旋階段の方へ案内した。
階段を昇り二階へとあがっていく。左右に廊下がのびている。
執事は右の方へ案内した。一堂それに従い右へ向かう。
廊下の左右には均等な間隔で向かい合わせに扉が連なっている。まるでホテルの様だった。
奥に近い一室の扉が開いていた。執事はそこに導び入れた。
部屋の中は個室だった。どうやらメイドの個室らしい。右手には洗面所とトイレ、左手に風呂場がある。ユニットバスではなかった。
「風呂とトイレが別々の個室か。かなり待遇がいいんだな」
それを見て本郷が言った。
「それに設備もいいな。建物は古そうなのに」
「我が家は使用人に対して高待遇を約束していますので」
執事は表情を変えることなく言った。
中央にはテレビが置かれていた。本棚やテーブルもある。
その右手にはベッドがある。白いシーツの大きなベッドだった。
床は絨毯が敷かれている。屋敷の中とは異なり青っぽい絨毯である。
部屋の中は別段変わったところはなかった。ただしその奥のベランダは違った。
ガラスは鮮血で染まっていた。血飛沫が透明は筈の窓を真っ赤にしていた。
右手の窓が開いていた。そこから血溜まりと血で濡れた女の白い手が覗いていた。
ベランダに少女の遺体はあった。黒いメイドの服を着ている。
ベランダから見えていたのは右の手首だった。左の手首は喰われ骨だけになっている。服ごと背が食われ血塗れの背骨が見えている。やはり陵辱されていた。スカートが捲し上げられ下着が剥ぎ取られていた。
この遺体で最も陰惨だ
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