第二章その二
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話は早い」
カレーはまた顔だけで笑った。
「今回の一連の事件はあの野獣を彷彿とさせます。これは代々この地に住む者として看過出来ないことです」
真摯な声で言った。
「及ばずながら一市民としてこの事件に協力させて下さい。今回はそれを御願いしにここまで来ました。署長、よろしいでしょうか」
「喜んで。市民の方々の協力程有難いものはありませんし」
「では御願いします。何かあればこちらに電話を」
名刺を差し出す。自身が経営するワイン製造会社の名刺だ。その電話番号、そしてカレー自身の携帯の番号も書かれている。左上にはカレーの写真がある。
「名刺ですか。日本風ですね」
「日本に仕事で行った時便利なものだと思いましたので。真似をさせて頂きました」
やはり顔だけで笑いつつ言った。
「何かあれば何時でも電話して下さい。それでは私はこれで」
「はい」
握手の後会釈をして部屋から出て行った。五人はそれを見送ると捜査室へ移った。
「捜査への協力か、やれやれ」
立ったまま本郷が肩をすくめて言った。
「かの野獣が暴れ回っていた頃あの一族は何かと捜査を妨害していたと言われていますからね。祖先の不名誉を晴らしたいのでしょう」
「祖先の!?」
署長に対し二人は思わず声をあげた。
「はい。カレー家は野獣がこの一帯を騒がせていた時捜索隊や討伐隊の行動に何かと介入し捜査を遅らせていたのです。それはまるで野獣を庇う様であったと言われています」
「庇う、ですか」
「代々フランス国王の陰の切り札として暗躍してきたカレー家の発言及び行動は国王といえどもむげには出来ませんでした。これにより野獣に対する捜査がかなり遅れたと言われています」
「成程。何が目的でその様なことを?」
「それはわかりません。野獣と何か関係があったのではないか、と噂する声もあったようですが何分相手がカレー家だったので面と向かっては言えなかったようです」
「でしょうね。そしてカレー家は歴史の陰で暗躍しつつ今に至る、と」
「はい。事の真相は謎のままです。しかし今回はカレー家はあの様に妙に積極的に動いています」
「カレー家自体が変質したのかそれともあの人狼について知っている事があるのか」
「気になりますね」
五人はテーブルの上に置かれた資料を前に思案に耽った。
「それにしても俺達のことまで知っていたとは驚きですね」
署長達が去った捜査室の端にテーブルを置き本郷と役は昼食を採りつつ話をしていた。わざわざ運んできてもらった。玉葱と人参のコンソメスープとサラダ、大蒜や胡椒を効かせた兎と香草の照り焼きである。
「うん。我々への自分達への実力誇示だろう。これだけの情報収集能力を持っているとね」
「そして妙な行動をするな、と。あからさまにやってくれますね」
フォークで肉
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