第百四十二話 小谷城からその十二
[8]前話 [2]次話
「まだ戦う必要があるわ」
「まだか」
「入れ替わり立ち替わり仕掛けてもか」
戦うだけ朝倉の軍勢は疲れる、既にそれはかなりのものになっている。だがそれでもまだ彼等は果敢だった、全ては宗滴の采配故だ。島も感嘆するそれである。
「お見事じゃ、まことに」
「五倍の相手にここまでとはな」
「しかもこちらの方が具足も武具もよいというのに」
大谷が言うことはその通りだ、織田家の武具や具足はどれもかなり質がいい。陣笠の足軽達にしろ袴に草履であり小手も備えている、そして具足も腹だけでなく腰も覆っている。しかも陣笠もかなりいいものである。
しかも長槍に矢の数は多く弓も大きい、無論刀もいい、織田家は鉄砲だけではないのだ。
だがそれでもだった、今の朝倉家が今も果敢に戦っていた。
森と池田も攻める、だがそれでもだった。
森は宗滴が自ら率いる軍に攻めながらだ、池田に唸る様にして言った。
「駄目じゃ、これは」
「はい、それにです」
「それに。何じゃ」
「はい、敵軍にですが」
ここでだ、池田は朝倉の軍勢の中の一人の陣羽織を指差した。彼はというと。
「あの者ですが」
「むっ、あれは」
森も気付いた、その者はというと。
「斎藤龍興か」
「はい、どうやら」
「あの者今は朝倉の軍勢におったか」
「その様ですな」
「ふむ、美濃におった頃とは違うわ」
あの酒色に溺れていた頃とはというのだ。
「随分と勇猛に戦っておるな」
「そうですな」
「あの者もおったとは」
「意外でしたな」
「全くじゃ、しかしじゃ」
だがそれでもだとだ、森は言った。
「あの者がいてもな」
「それでもですか」
「我等の今の敵は宗滴殿じゃ」
朝倉家の柱である彼だというのだ。
「あの御仁じゃ」
「ですな、それでは」
「まだ攻める、しかし中々な」
「どうも鉄砲がなければ」
池田はここで織田家が多く使うそれを出した。
「駄目ですな」
「鉄砲か」
「はい、攻めに鉄砲はあまり使いませぬが」
大抵は迎え撃つ時か伏兵に使う、織田家にしてもこれまではそうして使ってきている。
「ですが」
「それでもか」
「ここはそうすべきかと」
「ふむ、ではな」
「殿にお話してみますか」
「闇夜で鉄砲を使うのは危うい、やはりここは」
「朝ですな」
池田は森の言葉を察して言った。
「その時に」
「うむ、その時に仕掛けるべきだとな」
「殿に申し上げますか」
「それがよいな」
朝倉の軍勢を攻めながらのやり取りだった、そして。
信長に鉄砲のことを伝えた、信長もそれを聞いて言った。
「そうじゃな、これまで控えておったが」
「それでもですな」
「ここは」
「うむ、使う」
その鉄砲をだというのだ。
[8]前話 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ