第百四十二話 小谷城からその十一
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「宗滴殿と自ら剣を交えようぞ」
「殿もですか」
「行かれるのですか」
信長のこの言葉には森も池田も思わず声をあげた、流石に大将である彼自らが出るとは思わなかったからだ。
だが、だ。それでも彼はあくまでこう言うのだった。
「二言はない」
「しかし陣頭に出られれば」
「その時は」
「若し最後まで宗滴殿が崩れなけばな」
その時にだというのだ。
「わしが出よう」
「最後にですか」
「そうされますか」
二人もそれを聞いて言う。
「ではその時までに我等は」
「何としても宗滴殿を崩しましょうぞ」
「崩したその時にじゃ」
今攻めている朝倉の軍勢をそうした時にだというのだ。
「一気に越前まで向かうぞ」
「これまでの策通りですな」
「そうされますな」
「そうじゃ、退く朝倉の軍勢を追ってな」
まさにだ、その時にだというのだ。
「一乗谷まで一気に攻め入るぞ」
「ではその前に何としても宗滴殿を」
「我等の手で」
森と池田もその手に持つ槍に力を込めていた、そしてだった。
朝倉の軍勢を攻めるのに加わる、織田家は一晩かけてそのうえで朝倉の軍勢を代わり替わりに攻めていた。その数を使って。
数に劣る朝倉の軍勢は次第に疲れ数も減ってきていた、だがだった。
彼等はまだ立っていた、それも全てだ。
「やはり宗滴殿がおられるからのう」
「そうじゃな」
石田と大谷は今も陣頭に立ち戦う宗滴を見て言う、夜の中でも彼は鬼神の如く馬に乗り戦い続けている。
それを見てだ、二人も言うのだ。
「牛助殿に権六殿も攻められた」
「そして今もな」
丁度加藤や福島が攻めている、彼等の戦いぶりもかなりのものだ。
だがそれでもだった、朝倉の軍勢はまだ果敢に戦っている、長槍で幾ら攻められ弓で撃たれようとともだった。
宗滴の采配の下戦っている、それで言うのだった。
「我等も攻めたがな」
「倒しきれなかった」
「左近もいたというのに」
「恐ろしい御仁じゃ」
「このままでは朝になるのう」
その島も言って来た。
「戦は」
「一晩かかるか」
「五倍の戦力でも」
「宗滴殿は別格じゃ」
だからだというのだ。
「わしもここまで手強い相手ははじめてじゃ」
「御主もそう言うか」
石田は島のその言葉に眉を曇らせて問うた。
「鬼と呼ばれた御主が」
「鬼どころではないからな」
宗滴はそうだというのだ。
「まさに鬼神じゃ」
「鬼神だからか」
「鬼の上をゆく」
「わしも攻めきれんかった」
無論他の者達もだ、尚羽柴も既に退いている。
「このままな」
「朝まで攻めてか」
「ようやくか」
「そうじゃ、ようやくじゃ」
朝になってだというのだ、勝敗が決するのは。
それでだ、まだ暗い夜の中で言うの
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