第七章
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」
「さぞかしでっかい家なんでしょうね」
二人は今祇園を歩いていた。舞妓さん達がいる場所でもある。
「こんなところに家があるってんですから」
古い町並みである。左右に木造の家や屋敷が立ち並んでいる。そしてその横を和服を着た女性達が歩いている。彼女達がその舞妓さんである。昼は流石に化粧もああいったみらびやかな服も着てはいない。
この古い場所に住んでいるのはやはり古い人達である。本郷や役の様に北に住んでいる人間を余所者と認識する程の古い人達である。本郷はふとそれを思った。
そしてその中にある屋敷の一つの前に来た。見れば古風でかなり趣きのある門であった。
「ここですね」
「そうだな」
二人はその門の前に立った。そして入り口を見た。
名前は竜華院という。かなりものものしい名前だ。
「如何にも京都って感じの名前ですね」
本郷はその名刹を見て言った。
「じゃあ入りますか」
「ああ」
「お待ち下さい」
だがここで家の方から声がした。
「!?」
二人はその声に気付き顔を声がした方に向けた。見ればそこには一人の妙齢の美女がいた。
黒い髪を上で束ね、そして細くやや吊り上った目を持っている。その目の光は鋭く、何もかも射抜くようであった。
姿勢はよくスラリとしていた。そして立ち居振る舞いも落ち着いており気品を感じさせるものであった。着ているのは絹の和服であり淡い赤の光沢と花の模様で飾られていた。日本の古きよき香りのする、そんな美女であった。
「貴女は」
「この家の主でございます」
美女は落ち着いた気品のある高い声で言った。その声は実に張りがあるものだった。
「竜華院貴子と申します」
「竜華院さんですね」
「はい」
その美女は本郷の言葉に頷いた。
「実は御聞きしたいことがありまして」
「わかりました。ではこちらでは何ですから」
そう言って屋敷の方に顔を向ける。見れば古風な、門と同じく趣きのある屋敷であった。木造でしかもかなり大きい。見れば檜で作られていた。
「中で。お話しませんか」
「宜しければ」
役がそれに応えた。
「わかりました。それでは」
「はい」
こうして本郷と役は竜華院の屋敷に入った。そしてその中にある茶室に案内された。
屋敷の中は実に広かった。廊下も檜であり途方もなく長い。二人はその木の廊下を貴子に案内されながら進んだ。
その左右には庭や部屋の入り口、そして襖が見える。襖も美しい絵が描かれ、庭は緑と水で覆われている。かっては日本にも多くあった奥ゆかしい屋敷であった。
「こちらです」
貴子は狭い入り口の前で立ち止まった。
それは茶室の入り口だった。そこで話をしようというのだ。
「お茶をお入れ致しますので」
「申し訳ないです」
「それでは」
「はい
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