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京に舞う鬼
第六章
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しろですね」
「そうだ。中国にもな」
 茶と言えば中国である。だからこれは言うまでもない。
「しかしそれを道にしたのは日本だけだ」
「日本だけ」
 役の言葉が前を見据えたものになったのを見て本郷も目をあげた。
「そう。そして彼女はそれについても師匠がいた」
「そこに何かありますか?」
「さてな」
 しかしこれには答えなかった。本郷はその言葉を聞いて心の中で拍子抜けを覚えた。
「確かなものはな。まだわからない」
「そうですか」
「だが彼女が華道等を嗜んでいるのはわかった」
「と言ってもそれだけですよ」
「しかしここから事件が解決することも多いな」
「まあそうですけれど」
「じっくり読んでいこう。今はそうして知識を蓄えて細かい部分を調べるべきだ」
「わかりました」
「ただな」
「ただ。何ですか?」
「どうにも引っ掛かるな」
 役は資料を読みながらこう呟いた。
「!?何かあるんですか?」
「その華道や茶道のことだ」
「そこはもう」
「師匠を。あたってみる必要があるな」
「けれどそんな旧家の習い事のお師匠さんなんて変な人いないでしょう?」
「表向きはな」
 役は一瞬横を見た。
「実際の顔はどんなものかは誰にもわかりはしない」
「まあそうですけれどね」
 本郷にもそれはわかる。こうした仕事をしていると自然にわかってくるのだ。
「それじゃあ明日からはそっちも調べてみますか」
「そうだな」
「鬼が出るか蛇が出るか」
「今一番可能性があるのは」
「鬼、ですね」
「そうだ。札が教えてくれた」
 そこで懐から札を出した。もうあの黒く焦げた札ではないが。
「だが気をつけた方がいいな」
「札が焦げた件ですか」
「あんな強力な妖気は今までそうそう察したことはない」
「そんなに」
「これは。酒呑童子に匹敵するかもな」
「驚かさないで下さいよ」
 本郷はそれを聞いて思わず笑ってしまった。
「あの鬼に匹敵だなんて。魔王じゃないですか」
「そう、魔王かもな」
「魔王って」
 酒呑童子は平安時代に現われたという恐るべき鬼である。言い伝えに残っている鬼の中では桃太郎と戦った温羅に匹敵する強力な鬼である。五色に輝く巨大な身体と無数の目を持っていた。そしてその圧倒的な魔力と腕力によって京の都を脅かしていたのだ。
 それに匹敵する力の持ち主ともなれば。確かに魔王であった。
「それだけに見つけ辛いかもな」
 力の強力な者はそれだけ己の力を知っている。それを隠す術も知っているということなのだ。

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