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京に舞う鬼
第五章
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人の横を通り過ぎていく。
「懐かしいなあ」
 本郷はそんな学生達を見て目を細めた。
「俺も少し前まではこうして毎朝学校に通っていたんだったっけな」
「いい思い出だったみたいだな」
「成績は悪かったですけどね」
 二人は校庭を歩きながら話をしていた。
「大学にはスポーツ推薦で入りましたから」
「そういえばそうか」
「大学では成績はよかったですけれどね」
「大学では講義に出ているだけで単位はくれるからな」
「あっ、わかってましたか」
「それ位知っているさ。日本の大学のことはな」
「きついお言葉」
「だがそれは別に悪いことじゃない」
「はあ」
 この言葉は少し意外だった。ここでてっきり学生批判や大学批判をするのかと思ったからである。
「人間学ぶべきことは一つだけではない」
 役は言う。
「大学で学ぶこともまた一つではないのだ」
「そういうことですか」
「そうだ。だから別にそれは悪いことじゃない」
「成程」
「君にしろ大学で学んだことは多いだろう?」
「それで今こうやって探偵やってるわけですからね」
 本郷は少し上へ目線をやりながら述べた。
「剣道やら手裏剣やらやったおかげで」
「手裏剣か」
「意外ですか?」
「今やってる人間は少ないからな。それは大学で覚えたのか」
「他にも色々と覚えましたけどね」
「酒や煙草か?」
「いえ、それは高校の時に」
「そうか」 
 学校で話すべきことではないが役はそれには構わなかった。周りの学生達も彼等の話は聞いていない。
「体術もね。本格的に身に着けたのは大学からですし」
「そして魔と戦う力にも目覚めたのだな」
「そうですね。色々身体を苛めているうちに」
「魔物と戦う流儀は一つではない」
 役は述べた。
「身体を使ったものもある」
「俺はどっちかというと肉体派ですからね」
「そうだな。君はそれでいい」
「はい」
「私も私で流儀があるしな」
「ええ」
「それについては構わない。黒魔術でも白魔術でもな」
「魔物を倒せれば」
「そういうことだ。君にしろ体術だけではないしな」
「それだけでやっていける世界じゃないですしね」
「うむ」
「まあ俺も色々勉強してますからね、これでも」
「いいことだ。それだけ生きられる時間が長くなる」
「生きられる、ですか。嫌な言葉ですね」
「人は何時か死ぬ」
 役はクールに述べた。
「だったら畳の上で死にたいだろう」
「確かに」
「そういうことだ。では中に入ろう」
「はい」
 校舎の前に着いた。そしてその校舎の中に入る。
 校舎の中も綺麗であった。ただ校舎が綺麗なのではなく掃除も行き届いていた。
「ふむ」
 役はゴミ一つない廊下やシミがよく拭き取られた壁、透き通った窓等を見て声をあげた。

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