暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
ALO
〜妖精郷と魔法の歌劇〜
落下予測
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ンテナンス明けでモンスターアイテムの湧出(ポップ)がリセットされた直後だけあって、プレイヤーの通行は意外に多かった。

すれ違う、巨大な戦斧を背負う土妖精(ノーム)や、銀色の竪琴を携えた音楽妖精(プーカ)、薄紫色の肌を持つ闇妖精(インプ)などの多種雑多なプレイヤー達が連れ立って楽しそうに談笑しながら歩いている。

所々に配置されている石のベンチでは、赤い髪の火妖精(サラマンダー)の少女と青い髪の水妖精(ウンディーネ)の青年が仲睦まじく見つめあい、その反対側ではハンマーを持つ鍛冶妖精(レプラコーン)が露店を出して鉱物オブジェクトを一心に携行炉に放り込んでいた。

その先にある、高くそびえ立つアルン市街の表面には、薄いグレーの岩でできた建材とは明らかに異なる質感の、モスグリーンの恐ろしく太い円筒がうねりながら何本も伸びている。一本一本の直径は、軽く二階建ての建物ほどもある。

アルン中央市街全体を包み込むように這い回るそれらの円筒物は、実は木の根なのだった。

遥か地下のヨツンヘイムから、分厚い地殻を貫いて伸びて上がる根っこは、うねうねと曲がりながら次第に合流し、太さを増し、アルン市街の頂点で《世界樹》として一つになっている。

レンは天を仰ぎ見る。

根元部分からは、巨大という言葉では到底足りえないほどの太い幹が、真っ直ぐ上空に伸び上がっている。

苔やその他の植物に覆われて金緑色に光る幹は、高さを増すほどに空と溶け合い、薄いブルーに変わっていく。やがて幹の周囲を、白いもやが取り囲む。それは霧ではなく、雲。飛行制限エリアを示す雲の群を抜き、幹はなおも高く高く伸びていく。

そして、完全に空の青と混ざって見えなくなる寸前で、幹からは太い枝が放射状に広がっているのがどうにか見て取れる。

樹の頂点はアルヴヘイムの大気圏を突き破り、宇宙───もし存在するならだが───までも続いていてもおかしくはなかった。

しかし、その途中に《いる》のは分かっている。

姿も見えない。

声も聞こえない。

されど、だけれども、レンには感じる。

マイがそこにいる事を。

と、その時。

キリトの胸ポケットから勢いよくユイが顔を突き出した。

いつになく真剣な顔で、食い入るように上空を眺めている。

その端正な顔に浮かんでいるのは、驚愕、そして僅かな────

歓喜。

「お、おい………どうしたんだ?」

周囲の人目をはばかるように、小声でキリトが囁いた。リーファが首を傾げながらピクシーの顔を覗き込んだ。

しかし、ユイは無言のまま見開いた瞳を世界樹の上部に向け続けた。数秒間が経過し、そしてついに小さな唇から掠れた声が漏れた。

「ママ……、ママがいます」

「な…………」


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