第四章
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である。
「この反応は独特のものでね」
役は本郷にその焦げた札を見せたまま言う。
「鬼のものだ」
「鬼ですか!?」
だが本郷はその言葉には懐疑的であった。
「鬼の反応ってそんなのでしたっけ」
彼の記憶にある反応はそうではなかったのだ。
「ただ薄く黒くなるだけだったと思いますけれど」
「普通の鬼はな」
「普通の、ですか」
「どうやらこの鬼は普通の鬼ではないらしい」
「というと悪霊ですか?」
本郷はそれを聞いて言った。実は鬼は一つではないのだ。様々な鬼が存在する。よく童話に出て来るような角を生やして赤
や青の肌をして虎縞の服に金棒を持つ鬼の他にも鬼婆もいる。そして他には今本郷が言った悪霊としての鬼も存在する。中国では死んだ者の霊を鬼と呼ぶのである。例えば加藤清正は朝鮮戦役において『鬼上官』と李氏朝鮮の軍隊に呼ばれていた。日本ではこれは加藤清正が鬼の如き強さを発揮してその勇猛さを敵にも讃えられたと思っていたが実は違っていた。李氏朝鮮は中国の文化の影響が歴代の朝鮮半島の政権の中でも極めて強かった。その為彼等は加藤清正を死神の如き人物として忌み嫌っていたのである。
「いや、それとも違う」
だが役はそれも否定した。
「じゃあ何なんですか!?」
「相当な力を持っている鬼の様だが」
「相当な、ですか」
「これは気を着けた方がいい。あの寺でも証拠は何一つ残していなかった」
「ええ」
「頭も切れる。相当強力な相手だぞ」
「今わかってるのはそれだけですか」
本郷はテーブルの上に資料を置いて溜息をついた。
「しかもろくでもない話だ」
「いや、それは違うな」
しかし役は本郷の言葉も否定した。
「これも違うんですか」
「相手が強いとわかれば用心するだろう?」
「確かにそうですけれどね」
「それがわかっただけでもいい。とにかく今回は気を引き締めていこう」
「いや、今回も、じゃないんですか?」
「今回も、か」
「はい。だって俺ここに来てからずっと楽な仕事してませんから」
「そうかな」
「何かとんでもない化け物ばかりじゃないですか。京都ってのは何かあるんですか?」
「何かないと言えば嘘になる」
役の返答は身も蓋もないものであった。
「京都は古い街だ」
「言うまでないですけれどね」
「そして多くの出来事があった。貴族達の謀略があれば戦乱もあった」
それが京都の歴史であった。貴族や僧侶、僧兵、武士、商人、様々な者達がこの街において様々な陰謀や戦乱、流血沙汰に関わってきた。平安時代から幕末まで。この街はそれだけ人々の負の感情もその中に置いてきているのである。
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