臨海学校 後編
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と同時に束が大きな声で宣言する。
「じゃんじゃじゃーん!! これぞ箒ちゃん専用ISこと『紅椿』だよーん!! 全スペックが現行のISを上回る束さんお手製のISだよ!」
箱の中の真紅のIS、紅椿を誇らしげに胸を張って説明する束。生徒の殆どがその機体に目を奪われる中、響はただ黙々と機材を運ぶ。
「響さん? あのIS見ないんですの?」
作業を続ける響に疑問を持ったセシリアが怪訝そうに聞くものの、響は小さく溜息をつきながら、
「さっさと準備終わらして、さっさと試験運用かたしちまったほうが楽だろ? それに篠ノ之のISなんて興味ねぇし」
「だが全スペックが現行ISを上回っているということは、かなりの機体なのではないか?」
ラウラも箒の機体を見つめつつ、響に語りかけるものの、
「だからどうした? 結局どんなに物が良くても、乗るヤツがそれを有効に使えるか腐らせるかどっちかだ。機体を見たからって何かが変るわけじゃねぇだろっと」
現在響は紅椿や箒たちには目もくれていない。ただ黙々と自分の仕事をこなしていく。それに触発されてか、セシリアやシャルロットも準備を再開し始めた。
するとまたしても轟音が鳴った。
どうやら今度は紅椿の武装チェックをしているらしい、上空二百メートルほどで装備されている刀を持った箒が誇らしげに顔を緩ませている。
だが、響はそれを快くは思わなかった。
「……慢心しすぎていつか自分の首を絞めなきゃいいけどな……」
「響? 今何か言った?」
「いんや、気のせいだろ」
響は聞いて来たシャルロットに笑いながら返す。
……強すぎる力はいずれ自らを苦しめる足かせとなる、か。父さんが言ってたっけな。
今は亡き父の言葉を思い返しながら、響は自らのIS、紅椿の強さに興奮しているであろう箒をじっと見つめていた。
するとそのとき、
「お、織斑先生! 大変です!!」
真耶の焦りを孕んだ声が聞こえた。
「どうした?」
「と、とにかくこれを!」
真耶から渡された小型端末の画面を確認しながら千冬は顔をしかめる。
「特務任務A、現時刻より対策をかいしされたし……」
「そ、それがハワイ沖で試験運用に当たっていた軍用の――」
真耶はまだ焦った様子で告げようとするものの、千冬がそれを遮った。
「しっ。軍事機密を声に出すな。生徒に聞こえる」
それに頷いた真耶は声ではなく、今度は手話で現状を伝え始める。どうやら普通の手話ではなく、軍用の手話のようだ。
それを遠めで見ながら響は、
……こりゃあ確実に何かあったな。絶対めんどくせぇことが。
「何かあったのかな?」
「さぁな」
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