第二十六章
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が問う。
「この世を。捨てようと思っています」
即ち出家だ。彼女はそれを考えていた。
「執着を捨て。そして私の影により殺された少女達の菩提を弔い残りの生を送ろうと考えています。それが私が出来る罪の償いです」
「そうですか」
「はい。もう迷いはありません」
そこまで決意していた。もう役も本郷もそこに入ることはできなかった。
「ですからこれで」
「わかりました」
役がそれに頷く。
「では。貴方の好きなようにされて下さい」
「はい」
貴子は竜華院の名を捨てた。その美の道も捨て一介の尼僧としてこの世を捨てた。寺の奥深くに篭もりこの事件の犠牲者達の菩提を弔うことになった。それで全ては終わりであった。
「御苦労さん」
事件が終わったのを知った警部は二人を快く迎えた。事務所で大きな笑顔を浮かべている。
「一時はどうなることかと思ったがね」
「まあ何とかね」
それに本郷が応える。
「終わりましたよ」
「何人も犠牲者は出してしまいましたが」
「そうだな。陰惨な事件だった」
警部は役のその言葉に顔を暗くさせた。
「殺し方もな。化け物だけはあった」
「鬼でしたしね」
「鬼か」
「はい、角のない、人の形をした鬼でした」
「人の影から生まれた」
「あの先生の影だったんだな」
警部も話は聞いていた。
「本当にな。わからないものだ」
上を見上げて言った。
「道への追求が鬼になるとはな」
「どんなことでも一歩間違えればそうなるのですよ」
「そうなのか」
「はい」
役は静かな声で言った。
「一歩間違えればそれで鬼になります」
「それだけで」
「だからこそ恐ろしい」
「何事も」
「人から鬼が生じるのは。簡単なことです」
「それで。大変なことになっちまうんですよ」
「人の中に鬼がいる、か」
「そういうことです」
「よく言われることだが。実際に聞いてみるとな。暗鬱としてしまうものだ」
「けれどこれで事件は終わりですよ」
本郷は言った。
「何はともあれ一件落着、ってわけです」
「祇園祭までには終わったな」
「まあそうですね」
本郷はそれを言われてようやく祇園祭のことを思い出した。
「で、俺達はこれで暫くはオフです」
「何処かで羽を休めることにしますよ」
「おっと、それはまだ先でもいいんじゃないか?」
「?何かあるんですか?」
「祇園祭だよ」
警部はここでにこやかに笑ってきた。にこやかではあったが含みのある笑みであった。
「何か一つ忘れてないか」
「報酬は振り込んでくれていますよね」
「それはもうとっくにな」
「じゃあ一体」
「役君にはわかっていると思うが」
「祇園だからですね」
「そう、祇園だからだ」
「!?」
本郷はその話を聞いて首を傾げさせ
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