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京に舞う鬼
第二十五章
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」 
 刀を突き出した。それで鬼を貫く。刀が鬼の胸を貫いていった。
「ガハァッ」
 鬼はそれを受けて大きく血を吐き出した。着物だけでなくその下の畳までも紅に染まる。
「役さん」
「うむっ」
 本郷の言葉を受けて役も頷いた。素早く拳銃を放つ。
 銀の銃弾もまた鬼を貫いた。その身体が弾ける。それを見るだけで致命傷なのは明らかであった。
 本郷は着地した。鬼の身体から刀を抜き後ろに跳ぶ。鬼はその前でゆっくりと身体を床に倒していった。
「やった、か」
「おそらくね」
 本郷は役の横に来ていた。そして彼の言葉に応える。
「もう。立ってもいられないみたいですし」
「この事件も終わりか」
「お、おのれ」
 だが鬼は立てなくともまだ声は出せた。呪詛に満ちた声を吐き出していた。
「まさか。人間なぞにわらわがやられるとは」
「何言ってやがる」
 本郷は燃え盛り続ける部屋の中で鬼に言った。
「ずっと言ってるだろ、鬼ってのは人間に退治される運命なんだよ」
「くっ」
「これでわかっただろ。さっさと観念しやがれってんだ」
「ま、まだじゃ」
 だが鬼はそれでも諦めようとはしない。立とうとする。恐るべき執念であった。
「わ、わらわはまだ美を極めてはおらん」
 畳の上に腕をつきながら言う。その整った口元からは紅い血が一条滴り落ちている。
「娘達を堪能し、その身体と花で創り上げる至高の美を。まだ極めてはおらぬ。極めるまでは」
「そっから先は地獄で追い求めな」
 本郷は一言で言い捨てた。
「他人を犠牲にする芸術なんてな、芸術でも美でもねえんだよ」
「う、うぬれ」
 鬼はそれに言い返そうとする。だがそれは適わなかった。
「ガハッ」
 大きく血を吐いた。それで終わりであった。
「もう何か言うことも無理みてえだな。折角だから今際の際の言葉も聞きたかったがな」
「だがこれで全ては終わった」
 最後に役が言った。
「帰るか」
「火はどうしますか?」
「心配することはない」
「何か術でもあるんですか?」
「術と言えるものではないが」
 手の平に氷を作り出してきた。

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