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ドラクエX主人公に転生したのでモテモテ☆イケメンライフを満喫できるかと思ったら女でした。中の人?女ですが、なにか?
二部:絶世傾世イケメン美女青年期
九十八話:思い出の港で船出を待つ
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ヘンリーが、可哀想か。
うん、そうかもしれない。
でも置いてきたい私と、着いてくるつもりのヘンリーの利害が、十年すり合わせても一致しなかったから。
どちらにも、歩み寄る気が無かったとも言うが。
利害が一致しない以上、自分の希望を通すためには出し抜くしか無い。
……しかし、十年一緒にいた相手が、今日からはもういないのか。
……寂しいなあ。
うん、寂しい。
いや、寂しいよ、それは。
これで寂しくないとか、どんな冷血だって話ですよ。
ここはパパンとの思い出の地でもあることだし、なんだか酷く感傷的な気分に。
「……ごめん。ちょっと、一人にしてくれる?」
「……ドーラちゃん」
「……ピキー」
「御意。さ、スラリン殿、コドラン。船室にでも参ろう」
少々沈んだ私の雰囲気を気遣って迷うコドランとスラリンに、同じく気遣ってふたりを促してくれるピエール。
済まないねえ、みんな。
あとで元気になったら、フォローでもお礼でもするから。
今は少し、一人で浸らせて欲しい。
仲間たちが船室に去って一人甲板に残され、心置きなく物思いに耽ります。
……勝手に置いてきて勝手に寂しくなるとか、馬鹿らしいにも程がありますが。
こうなるだろうことはわかっててやったからね、仕方ないね。
だって、同性の友人ならともかく。
相手が異性である以上、まかり間違って惚れられないとは限らないし。
今だって惚れられてるとも、られてないとも確認できてないし、その可能性がある以上は。
その可能性を受け入れられない以上は、私はいつまでもヘンリーと一緒にいるべきじゃない。
一緒に来ようとしてくれるからって、甘えたらいけない。
一時的に、少しくらい寂しくなったって。
きっとすぐ慣れるし、別れるなら早いほうがいい。
……あー、でも寂しい。
……泣いてもいいかな?
今だけ、ちょっとだけ。
いや、まだ早い、船が動き出したら。
完全に勝ちが確定したら、ちょっとだけ泣こう。
とか思ってる間に、急かした甲斐があったのか無かったのか出港の準備が整ったようで、タラップが外されます。
これで、この大陸ともヘンリーとも。
本当に、しばらくお別れか。
ルーラを覚えて、私かヘンリーか、もしかして双方がそれぞれ結婚でもして、ルート回避が確定するその日まで。
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